『おかえりモネ』マモちゃん×すーちゃんの意外なカップルが誕生 宇田川さんの切ない過去も
「説得力、よくわかんないけどわかった。私にはない」
野坂(森田望智)と内田(清水尋也)の熱がこもった社内プレゼンを目の当たりにし、静かに立ち去った莉子(今田美桜)。『おかえりモネ』(NHK総合)第83話では、その言葉の真意が明らかとなる。
莉子の語る“説得力”が意味するもの、それは多分その人を前へ進める“動力源”みたいなものだ。野坂や百音(清原果耶)は身をもって経験した災害による被害を最小限に留め、地域と人を守ること、内田は気象データを活用し、自分と同じ花粉症を患う人たちの悩みを少しでも解消すること。きっかけは大きくても小さくても突き詰めていけば、やがてその人自身の“専門性”になる。確かな知識と、自分事として話せる熱意が他人を動かすのだろう。
莉子の最大の目標は小さい頃から夢だった報道キャスターになることだった。子供の頃は「なんでもいいから夢を持ちなさい」と言われるのに、大人になると必ず理由を求められる。最初は「なんか、かっこいいから」だったかもしれない。それでも莉子は自分の中で怒りを消化し、世間から押し付けられた“可愛くていつも元気な女の子”像を守りつつも、気象キャスターとしての技術と知識をつけ夢へと着実に歩を進めてきた。なのに今度は性別や見た目だけで判断し、本質を見ようともしない人たちから“軽くて説得力がない”と心ない言葉を浴びせられる。
百音が奈津(マイコ)から聞いた宇田川さんの過去も本質的には莉子の話と一緒だ。絵や習字が得意で、マイコが認める才能もあったのに“普通”の、“ちゃんと”した会社に就職した宇田川さん。
「水が違うっていうのかな、沼でじーっと静かに世の中見ていた人が荒波の海に放り出されちゃった……みたいな」
そして、宇田川さんは世間の普通や良しとするものに押し潰されてしまう。そんな彼をずっと見てきた奈津の言葉には確かな愛情があって、誰も知らない宇田川さんの良さを宝物のように大事にしている感じがした。水が合わない場所に放り込まれた宇田川さんと、自分が求めていた場所から突然連れ出されそうな莉子の姿が重なる。宇田川さんを放り込んだのも、莉子を連れ出そうとするのも、粒立ちを均す世間の声だ。2人が綺麗な海で自由に泳げる魚になれたらいいのに。