『うきわ』麻衣子の様子にアタフタなたっくん コミカルで憎めない大東駿介の芝居
ついに主人公・麻衣子(門脇麦)がベランダの向こう側に行った『うきわ ―友達以上、不倫未満―』(テレビ東京系)第5話。「表情には出すくせに言葉に出すのが苦手」だと一緒にクリーニング店で働く佐々木くん(高橋文哉)にズバリ指摘された彼女が、自身の殻を大きく破っていく様子が描かれた。
二葉さん(森山直太朗)と食事に行った帰りに麻衣子が思わずとった行動を「なかったことにしましょう」と帳消しにされ、失恋モードで常に“心ここにあらず”な彼女。その様子に夫・たっくん(大東駿介)は自分の不倫がバレたのではないかと全く違う方向に気を揉む。ある意味、あっぱれな奴である。
「仕事が落ち着いたから」とわかりやすく早めに帰宅するようになり、麻衣子の好物だと思い込んでいるドーナツを“罪滅ぼし”的な気持ちもあってか手土産に買って帰る。そういえば、麻衣子は以前たっくんの母親が作ったドーナツをティッシュに包みベランダ越しに二葉さんに渡していた。ドーナツは間違いなくたっくん自身の好物なのだろう。
麻衣子にとってもたっくんはある意味“ツボを押し間違えている指圧師”なのかもしれないし、聖(西田尚美)が二葉さんの主体性のなさに静かに自身の心を閉じてしまったように、たっくんもまたどこかで麻衣子の常に受け身な様子に物足りなさを感じているようだ。「これが好き」ではなく「これでも大丈夫」と言う麻衣子に、たっくんは「期待なんかされてない感じ」と一抹の寂しさを滲ませる。そう思うと、たっくんが以前、不倫相手の福田さん(蓮佛美沙子)にこぼしていた「君と違ってさ、あいつは一人じゃ生きてけないから」もまた少し違う様相を帯びてくる。女性をすぐにカテゴリー分けしがちな男側の戯言かと思いきや、自分で好きなものを積極的に選び取ることもできない麻衣子の性質を暗に指し示している部分もあるのかもしれず、彼も彼で「あなたが好き」ではなく「あなたでも良い。あなたが好いてくれるから」と“積極的に選ばれたわけではない自分”という側面を麻衣子といる間は拭い去れないのかもしれない。短絡的、ゆえに軽薄な部分も否めないが分け隔てがなくなんだかんだ憎めない“陽”の側面のみのたっくんかと思いきや、彼にもドーナツの真ん中のような空洞が全く存在しないというわけではないのかもしれない。
福田さんが筋肉質の東大出身の細マッチョエリート彼氏がいながらもたっくんと離れられないのも、彼の分け隔てのなさと、考えていることが手に取るようにわかる単純明快さが心地良いのかもしれない。社内表彰の“輝く女性賞”を受賞してもなお、同僚や後輩からは粗探しをされ、“仕事での活躍”と同じく“女としての幸せ”も押し付けられるそんなマウント合戦の中にあって、たっくんといる時は“裏を読まなくても済む”のかもしれないし、少なくとも器用に立ち回らなくて良いと思えるのだろう。何より心底悪い奴ではないと瞬時に伝わってくるのがたっくんのある意味最大の罪なところなのだ。