『うきわ』二葉夫婦に生じたズレとは 諦めを宿した森山直太朗の芝居が絶妙

『うきわ』森山直太朗の芝居が絶妙

 『うきわ ―友達以上、不倫未満―』(テレビ東京系)第4話は、二葉家の過去が描かれた。

 二葉さん(森山直太朗)と妻・聖(西田尚美)は“欲しいもの”や“大切にする”ということの定義が微妙に違ったようだ。どちらが正解でどちらか一方が悪いということがないからこそ、このすれ違いは苦しく、そしてこの“微妙な違い”が重なると知らず知らずのうちに埋まらない距離が出来てしまう。聖も夫の優しさについて重々承知しながらも「ツボを押し間違えてる指圧師みたい」で「笑顔見せられなくなっちゃったんだよね」とこぼす。二葉さんもそのさまを「気持ちが掴めなくなった、全然取れないUFOキャッチャーみたいに」と例え、自分はどんどん仕事に逃げてしまったのだと回想する。

 「大切に想ってくれてるなら無理してほしかったのかもね、色々と」という妻と、「大切だから無理してほしくなかったんですよね、色々と」という夫。どんどん夫の前で笑顔を出せなくなっていることに自覚的な妻も苦しいだろうし、「私のことどう思ってる?」と彼女が幾度となく確認していた時、それこそが妻からのSOSで異変のサインだったのだろう。「そりゃあ、好きだよ、大事だよ」という単なる愛情確認的なことではなく、聖は「どうしたの?」という言葉を求めていたのかもしれないし、言葉だけではなく具体的なアクションを欲していたのかもしれない。妻の笑顔が好きで、その笑顔を見るために結婚したのに、そしてその笑顔を取り戻すために勧めた陶芸教室で……妻は笑顔を取り戻す、自分ではない別の相手と。皮肉なものだ。もしかしたら妻は夫から教室を勧められたことにさえ、本質的な解決策ではなく静かに失望し腹を立てていたかもしれない。

 “優しさ”のかけ違いとは厄介なもので、周囲からの理解も得られ難い。二葉さんの話を聞いた主人公・麻衣子(門脇麦)も「奥さん、ひどいじゃないですか。二葉さんの優しさにつけ込んで」と思わず口調を強め、陶芸教室の田宮先生(SixTONES・田中樹)も「旦那さん優しいのに、なんでここ(自分のところ)にいるの?」と首を傾げる。ただ一人、当の本人の二葉さん自身が自分は優しいわけじゃないと懐疑的な姿に、この夫婦の物語が幾重にも切なく響く。

 柔和な雰囲気を纏い、誰のことも受け入れてくれそうな包容力があり「絶対的な安心空間」を提供しながらも、実は誰に対しても一定の距離をとっているようにも見える二葉さん。ぐんぐん先に進み一人で抱え込みがちな彼の背中に、思わず麻衣子も駆け寄り手を握ってしまったのかもしれない。「二葉さん、一人にならないでください」と。二葉さんが投げ入れてくれた“うきわ”のおかげで何とか溺れてしまわずに息ができている麻衣子は、今度は自分が二葉さんにとっての“うきわ”になりたいと咄嗟に願ったのかもしれない。それとは対照的に今話のラストに決定的なシーンが描かれた。二葉さんとのことでショックを受け玄関に崩れ込んでいる麻衣子に夫・拓也(大東駿介)が差し出した手を彼女は無言で全力で振り解き、自力で立ち上がった。夫はやはり彼女のうきわにはなり得ないのだ。



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