『うきわ』食事の約束した麻衣子と二葉さん それぞれの関係性が入り組んだ第3話

『うきわ』麻衣子と二葉さん、食事へ

 『うきわ ―友達以上、不倫未満―』(テレビ東京系)第3話は、それぞれの関係性が輪郭を持ってはっきりと描かれ始めた。

 朝のゴミ収集場、主人公・中山麻衣子(門脇麦)と二葉さん(森山直太朗)にとって、ベランダの壁越し以外で顔を合わせて話せる“なくてはならない楽しみの時間”に不穏な空気が充満する。夫・拓也(大東駿介)と同僚の愛宕さん(小西桜子)の朝帰りの現場に遭遇するも、麻衣子に“モヤモヤ”を残したのはそんなことではなかった(本当に仕事で遅くなってしまったようで彼らの間には何もないようだ)。それよりも、砂場で一緒にお城作りをするような二葉さんとのとっておきの時間を台無しにされたことにガッカリしていることに気が付く。

 「おかえりなさい」と言う麻衣子に、「ただいまです」と答える二葉さん。互いに「おかえり」と言うべき相手も「ただいま」と言いたい相手も不在の2人がちょうど305号室と303号室の隣室同士なのだ。二葉さんが1人炒飯を作りながらコンビニの唐揚げをつついている時に、二葉さんの妻・聖(西田尚美)が陶芸教室の田宮先生(SixTONES・田中樹)に唐揚げを作るシーンが描かれる。その日は元々“陶芸教室の日”ではなく、聖が自宅で「夕飯を作る」と言っていた日だったが、同僚の出産祝いを渡そうと産院に行ったところで過去の自身の経験が思い出されいたたまれなくなり、自宅には帰れなくなってしまったのだ。

 二葉さんと聖はおそらく不妊治療をしていて子を諦めたのか、そこで互いのズレがあらわになったのか、とにかくそういった話題になると途端に聖は二葉さんではなく田宮先生の元に逃げ込みたくなってしまう。以前も、産休に入る同僚に対して思わず「だったら3人も産まなきゃ良いのに」と愚痴をこぼすメッセージを送ってしまった聖に田宮先生は「聖さんが頑張ってるのも優しいのもわかるから」とすべてを飲み込んでくれた。

 そんな想いを知ってか、聖が渡せなかった出産祝いの焼き菓子を「全部食べてしまうね」と頬張る田宮先生。彼の食器を聖は「私、買ってあげる」と言う。彼が陶芸家として有名無名に関わらず、仮にも“先生”と“生徒”の関係であれば、そんな言い方はしないはず。聖も十分に田宮先生に依存しつつ、自身の寂しさを埋め合わせるある意味都合の良いシェルター的な存在であることを自覚しているからこそ、自身も田宮先生にとってあくまで“都合の良い相手”であろうとしているのかもしれない。

 妻の帰りが遅かった日に食器棚に増えた食器を見つけ、さらには「御出産祝い」と書かれたのし紙がゴミ箱に捨てられているのを見つけた二葉さん。彼はそれを妻には追求することはしない。だからこそ、夫のスマホを見ようとした自分にも、不倫相手からのメッセージが届くスマホのロック解除のパスワードが自分と「付き合った記念日」だった夫にも、そのことにもう喜べない自分のことも嫌になったと言う麻衣子にかけられる言葉がある。「でもわかります。自分を責める方が楽なのは……」「頑張りましたね、中山さんは戦おうとした。一歩前進です」と。二葉さんはきっとしばらく休戦中なのだ。

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