『わかっていても』がヒットした3つの理由 古典的ラブロマンスの作風に隠れた新しさ

『わかっていても』がヒットした3つの理由

3. アップデートされた新時代の恋愛ドラマ

 使い古された手法ながらも、確信犯的に恋愛の甘さとほろ苦さをとことん見せるよう追求した今作。それでも、さすが昨今の韓国ドラマと思う場面も多々ある。まず、最終話を観た後に戻りたくなる第1話の冒頭は、いくら恋人でもそれはNG! な出来事から始まっている。その元カレはナビをコントロールしようとする高圧的な男性でもあった。

 第2話の飲み会のシーンでは、ある先輩のナビへのセクハラに対し「警察に通報するレベル」とすぐさま女性陣から抗議の声が挙がっていた。たとえ先輩であっても、「なんだこの空気は?」「俺が何した?」という懲りない態度を“あなたのせい”とはっきりと言い切っている。セクハラを、空気を読んで笑って誤魔化すことはもうしない。

 また、第2話で“ナビが初めてみたエロい夢”では、女性の欲望や性衝動を抑えることなく肯定的に見せた。その後のついに関係が始まってしまうシーンや、2人のじゃれ合いも、うっとりと見入ってしまうほどの映像美だ。そして、強引なところはあるが「イヤなことはしない」「決めるのは君」と繰り返すジェオンに、“わかっていても”抑えきれずに自分から飛び込んでいき、迷いながら自らの行動を選び続けたナビの主体性は、視聴者も(ツッコミを入れながら)観ていて好感が持てるものだったのではないか。

 さらに、美大生の友人たちもそれぞれキャラが立っていた。仲間内のギュヒョンと酔った勢いで交際を始めたビンナは、あれこれ指図する彼に「私を変えようとしないで」と宣言しており、ソルとジワンという両想いの同性カップルもいた。日本では見慣れたありきたりの作品のようでありながら、実はそうではない、新時代の恋愛ドラマらしさが今作には詰まっている。

■配信情報
『わかっていても』
Netflixにて配信中
写真はJTBC公式サイトより

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