『わかっていても』がヒットした3つの理由 古典的ラブロマンスの作風に隠れた新しさ

『わかっていても』がヒットした3つの理由

 韓国で話題をさらった『夫婦の世界』のハン・ソヒと、全世界2,200万世帯が視聴した『Sweet Home -俺と世界の絶望-』のソン・ガンという最旬俳優が共演し、日本のNetflixでも「今日の総合TOP10」常連作品となった ドラマ『わかっていても』が最終回を迎えた。

 今作は、とある美術大学を舞台に、愛は信じないけれど恋愛はしたい女性が、恋愛は面倒だけれど“Some(友達以上恋人未満)”を求める男性に“惹かれてはダメ”とわかっていても惹かれていく青春ラブロマンス。この設定だけを聞けば、日本にも昔からよくある少女漫画のようではあるが、なぜここまでヒットしたのか。その理由を探ってみた。

1. ハン・ソヒ×ソン・ガンの“わかっていた”ケミストリー

 最後の最後まで、視聴者をドキドキさせた今作。同名の原作はおなじみのNAVERウェブ漫画で、日本でもLINEマンガで読むことができる。その実写ドラマ化にあたり、恋愛で傷つき、誰かを愛することに疲れ切っているユ・ナビをハン・ソヒ、誰もが注目するようなルックスで、人当たりよく駆け引き上手なパク・ジェオンをソン・ガンが演じたことが何といっても大きい。

 モデル出身のハン・ソヒは、『愛の不時着』のソン・イェジンや『ヴィンチェンツォ』のチョン・ヨビンとはまた異なる、最近のK-POPアイドルを思わせる雰囲気だ。ITZYのリュジンに似ていると噂になったこともある。SHINee「Tell Me What To Do」(2016年)のミュージックビデオに出演し、2017年『ひと夏の奇跡~waiting for you』で俳優デビュー。EXO・D.O.主演『100日の郎君様』で政略結婚した世子嬪キム・ソへ役で存在感を示すと、2020年、英BCCドラマの韓国リメイク『夫婦の世界』で大胆な不倫相手を演じてブレイク。第56回百想芸術大賞・女性新人賞にノミネートされ、そのファッションや言動も注目を集めた。

 悪役のイメージのあった彼女だが、今作では一転、スウェットや作業着で彫刻づくりに励む素朴な美大生に。失恋の痛みを抱えながらモテ男ジェオンに出会い、いずれ傷つくと “わかっていても”彼に振り回され、友達以上恋人未満の関係を選んでいく女性ナビを好演。本心が見えないジェオンに対し、決定的な瞬間で拒むことのできない弱さ、でも「弾み」で事が始まるのはイヤと言える強い意志も持つ、複雑でリアルな感情の機微を見事に演じていた。

 一方、いつも探るような眼差しをたたえ、首元の後ろの蝶のタトゥーがミステリアスな雰囲気をさらに深めるジェオンを演じたソン・ガン。2017年、日本の漫画を原作にした『カノジョは嘘を愛しすぎてる』でデビュー。『恋するアプリ Love Alarm』から『Sweet Home -俺と世界の絶望-』『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』とNetflixオリジナルシリーズに相次いで出演して「Netflixの息子」と名づけられ、日本にも公式ファンクラブができた人気俳優だ。

 『ナビレラ』はクラシック・バレエを通じたハラボジ(おじいさん)とのブロマンスストーリーであり、『Sweet Home』では“半分モンスター”役、『恋するアプリ』シーズン2はソン・ガンのファンには不完全燃焼だっただけに、今作の“真剣な恋愛はしない”モテ男役に多くの人が色めき立ったはず。しかも、彫刻科の後輩となるジェオンはダイナミックな作風が持ち味らしく、バーナーで金属加工をする姿も様になった。まさに漫画のような世界観にハマれる、最も旬な2人が顔を揃えたわけだ。

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