『孤独のグルメ』『サ道』は最も今を反映した作品に “楽しみは奪えない”メッセージ

『孤独のグルメ』『サ道』の共通点

 今、私たちの日常に最も近いドラマがある。テレビ東京で毎週金曜深夜に放送中の2本、『孤独のグルメ Season9』、『サ道2021』である。

 松重豊主演の『孤独のグルメ』は言うまでもなく2012年から続く、歴史ある深夜グルメドラマだ。一方の原田泰造主演の『サ道』は、まだ歴史は浅いが、2019年7月期放送後、2019年・2021年のスペシャルドラマ2回を経て、再び連続ドラマとして戻ってくるという、短期間にして異例の回数の重ねぶりと抜群の安定感を持ったドラマである。そんな「王道」の域である深夜ドラマ2本にとって、今シーズンは今までと大きく違う。彼らの主戦場である飲食店、サウナにとって無視できない「コロナ禍」と向き合わずにはいられないからだ。

『サ道2021』(c)「サ道2021」製作委員会

 『#リモラブ』(日本テレビ)、『俺の家の話』(TBS系)をはじめコロナ禍、特に象徴的な「マスク着用」をテレビドラマの中にいかに反映するかの試行錯誤が感じられた2021年1月期までと違い、2021年4月期以降の多くのテレビドラマからコロナ禍描写や「マスク」が消えていったことが印象的だった。もちろんそれが悪いわけでなく、『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)や『コントが始まる』(日本テレビ系)といった傑作が多く誕生したのも4月期以降であり、新たなフェーズに移行したのだと言える。

 だがその一方で、マスクを着用して過ごす日常が当たり前になった今、テレビドラマが描いている「今」と、視聴者の「今」が大きく乖離しつつあることも否めない。そんな中で、何よりホッと息をつくことができる、最も「今」を反映した作品となっているのが、この王道の2作品『孤独のグルメ』『サ道』なのである。

 『孤独のグルメ』が常にリアルタイム性を重んじてきたのは、恒例の年末特番において生中継を入れるといった趣向を凝らしてきたことからもわかる。今回もコロナ禍の反映だけでなく、ギリシャ料理に、開催したばかりの東京オリンピックの話題を絡めるなどしている。『サ道2021』もまた、第1話においてフィンランド人ミロとの交流を通して東京オリンピックの話題が触れられる。

『孤独のグルメ Season9』(c)テレビ東京

 コロナ禍ならではの日常の面白さに気づかされる時もある。『孤独のグルメ』におけるマスク姿の女優陣の美しさだ。強烈なアプローチで五郎(松重豊)を当惑させる商談相手を演じるりょうが、ここぞとばかりにマスクを外しペットボトルの水を飲む。その瞬間、零れ出る色気。マスク越しでも伝わる原沙知絵の目力の強さ。店員役の磯山さやかの声の柔らかさ。それらはマスクを介するからこそ強く感じずにはいられない魅力だ。コロナ禍も1年以上経ち、マスクの下の素顔を知らない付き合いも増えていく中で、やむを得ない状況で垣間見える素顔にこんなにもハッとさせられる、我々の感覚の変化を感じずにはいられない。

 コロナ禍になっても『孤独のグルメ』は「井之頭五郎が、自らの欲望に忠実にひたすら食べ続ける」ドラマであり続ける。『サ道』も、サウナ雑学や、ナカタアツロウ(原田泰造)による、サウナ界のレジェンドへのインタビューが興味深かった2019年版と比べると、物語要素に重きを置いていることがわかるが、「働く男たちの悲喜こもごもと男同士の友情と共に描かれるサウナ紀行」という根本的な部分は変わらない。そこに「黙食」「黙浴」というルールが敷かれただけで、働く人々が仕事終わりに、つかの間内なる欲望に忠実になる瞬間を描いた2本のドラマの本質は揺るがないのである。



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