『孤独のグルメ』『サ道』は最も今を反映した作品に “楽しみは奪えない”メッセージ
両ドラマはこう言っている。「人の楽しみは、そう簡単に奪えない」(『サ道2021』第1話)と。
2作品に共通するのは「本能」だ。五郎は「本能の赴くまま、自由にわがままに飯をかきこむ」し、ナカタ、偶然さん(三宅弘城)、イケメン蒸し男(磯村勇斗)は、「サウナに入ると雑念が消える」理由を、「野生に戻れるから」「思考から感覚の世界に切り替わるから」だと分析する。彼らは、食べ物・サウナと向き合うことによって、感覚を研ぎ澄まし、本能に身を任せる。独り飯もサウナも、詰まるところ「自分の世界に没入すること」であり、だから、コロナ禍が妨げになることはない。
そもそも『孤独のグルメ』は元から「黙食」のドラマであり、あの象徴的な「腹が減った」瞬間の五郎の場面なんて、なんとも「ソーシャルディスタンス」的だ。
逆に『サ道』においては「黙浴」が推奨されることによって彼らの精神性はより高まっている。「整い世界で会話する」という高度な技術を身に着けてしまったように。サウナ終わりのビールと飲みニケーションはなくなったが、気の置けない仲間との繋がりはより密度が高いものとなった。「私たちはこうやって繋がることができる」のだ。
『孤独のグルメ Season9』において五郎が、これまで以上に大量に平らげているにもかかわらず、さらにテイクアウトか「今度はあれを食べよう」と次に行く予定を示唆しながら毎話エンディングを迎えるのも、今まであまり見られなかった形である。それは、「遠くにある好きな店が変わらず続いていると本当に嬉しい」と初回冒頭において独白した五郎の、コロナ禍で奮闘する飲食店へのエールだろう。
『サ道』2019年版で荒川良々が演じたサラリーマンが「今はこれでいい」のだとサウナの中で自分に言い聞かせた言葉が、第4話の前野朋哉、前原滉が演じた不器用な男たちの「自分に一番合うペースで進めばいい」という思いと重なる。何も変わらないのだ。世界が変わろうと、私たちの日々は。
何にも、誰にも奪われることはない。私たちの楽しみは。
■放送情報
ドラマ24『孤独のグルメ Season9』
テレビ東京系にて、毎週金曜深夜0:12~放送
※テレビ大阪のみ翌週月曜深夜0:00~放送
主演:松重豊
原作:『孤独のグルメ』作・久住昌之/画・谷口ジロー(週刊SPA!)
脚本:田口佳宏、児玉頼子
音楽:久住昌之、ザ・スクリーントーンズ
演出:井川尊史、北畑龍一、北尾賢人、佐々木豪
チーフプロデューサー:阿部真士
プロデューサー:小松幸敏(テレビ東京)、吉見健士(共同テレビ)、菊池武博(共同テレビ)
制作協力:共同テレビジョン
製作著作:テレビ東京
(c)テレビ東京
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume9/
公式Twitter:https://twitter.com/tx_kodokugurume
ドラマ25『サ道2021』
テレビ東京ほか、毎週金曜深夜0:52~1:23放送
「ひかりTV」「Paravi」にて、先行配信中
※第2話以降は、前話の地上波放送終了直後より先行配信
出演:原田泰造、三宅弘城、磯村勇斗
原作:タナカカツキ『マンガ サ道』(講談社モーニングKC刊)
監督:長島翔
脚本:根本ノンジ、竹村武司、山田能龍
プロデューサー:寺原洋平、五箇公貴、手塚公一、伊藤才聞
製作:テレビ東京、イースト・ファクトリー
(c)「サ道2021」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/sa_una37_2021/
公式Twitter:@sado_PRsauna
公式Instagram:@sado_PRsauna