『終末のワルキューレ』海外で大反響 格闘アニメの世界人気ともう一つの話題作が背景に

『終末のワルキューレ』海外での反響の理由

 この『ゼウスの血』という作品は、アメリカのパワーハウス・アニメーションと韓国の同友アニメーションが制作したAnime作品だ。本作は、なんと70以上の国のデイリーランクのトップ10に連ねたことがある(参照:Blood of Zeus on Netflix TOP 10 CountriesDays graph|Cinemagical)。ちなみに、日本では一度もトップ10に入ったことはない。日本で圧倒的な人気を誇る『鬼滅の刃』でも、海外デイリーランクに顔を出したのは30前後の国だ。

 この作品は、Netflixの公式ブログでも、2020年の主だったタイトルとして名前が挙げられている作品だ。2020年は、世界的なコロナ禍で配信の需要が伸びたが、Netflixはその中で韓国ドラマと北米におけるアニメの伸長に言及。そのけん引役となったタイトルとして『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』と一緒に『ゼウスの血』が挙げられている
(参照:What We Watched 2020|Netflix)。

 『ゼウスの血』は、古代ギリシャの平民へロンが、自分がゼウスの血を引く非嫡出子であることを知り、人類を危機から救うために立ち上がる姿を描く作品だ。絵がそれほど動く作品ではないのだが、物語への評価は高いようでロッテントマトでも高評価をマークしている
(参照:BLOOD OF ZEUS: SEASON 1|Rotten Tomatoes)。

 この海外製Anime作品もNetflixでは人気が高い。何も日本の作品だけが多く観られているわけではないのだ。こうした状況を櫻井氏はカリフォルニアロールに例えて、「『悪魔城ドラキュラ -キャッスルヴァニア-』や『ゼウスの血』だという。日本のアニメファンからは『これってアニメなんだろうか?』と思われている節もあるが、世界的には受けている」と語っている(参照:日本アニメの「メジャー化」宣言、Netflixが挑むアニメ産業の“再生”の道筋|Wired)。

 要するに、Netflixというプラットフォームにおいては、世界的には日本国内とは異なるアニメの人気の傾向が表れているということなのだろう。『終末のワルキューレ』はそうした流れに上手く乗っているので、世界的に多くの視聴者を獲得することができたのではないか。『終末のワルキューレ』も70以上の国のデイリーランクに顔を出しているのだ(参照:Record of Ragnarok on Netflix TOP 10 CountriesDays graph|FlixPatrol)。

※これは余談だが、比較の参考までに。日本オリジナルの実写ドラマ『全裸監督』がデイリーランクトップ10に入ったことがある国は、香港、日本、マレーシア、シンガポール、台湾、タイ、ベトナムの7カ国のみ。韓国ドラマ『愛の不時着』も10カ国にとどまっている。

 ちなみに、アニメの世界配信では大きなシェアを持つクランチロールの傾向は、日本国内とそれほど大きく変わらないように思える。クランチロールで人気の作品は概ね国内でも人気が高い。「クランチロール・アニメアワード2020」でベストアニメーションに選ばれたのは、『進撃の巨人(Season 3)』、『鬼滅の刃』、『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』、『モブサイコ100 II』、『さらざんまい』、『ヴィンランド・サガ』だった。これらは、総じて日本国内でも人気を集めた作品だ。海外のアニメファンもプラットフォームごとに棲み分けが進んでいるのかもしれない。

■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。

■配信情報
『終末のワルキューレ』
Netflixにて全世界独占配信中
Netflix作品ページ:https://www.netflix.com/jp/title/81281579

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