『終末のワルキューレ』でも絶妙なバランスを表現 ブリュンヒルデ役・沢城みゆきの手腕

 アニメ『終末のワルキューレ』が2021年6月17日よりNetflixにて配信中だ。『月刊コミックゼノン』で連載中のころから話題に上がっていた本作だが、2021年に全世界に向けて独占配信することが発表されると、俄然大きな注目を集めたことからも分かるように、大きな注目を集めた。

 人類滅亡を決めようとする神々と、それを覆そうとするワルキューレによって選出された人類史に残る英雄らが雌雄を決するバトル作品である本作。アニメーション制作にはグラフィニカが関わり、大久保政雄が監督を務め、キャラクターデザインはTVアニメ『スラムダンク』や『頭文字D』などでもキャラクターデザインを務めた佐藤正樹が担当。顔の輪郭や筋肉などの彫り、影の印象的なつけ方など含め、画力のある原作漫画のタッチをアニメ絵とうまくトランスレートし、原作をうまくアニメーション化することに成功している。

 例えば、初戦となるトール神vs呂布奉先のハンマーと戟を使ったバトルシーンも、2戦目となったゼウスvsアダムのグーパンチの殴り合いも、ケレン味溢れる画面演出と作劇が重なる。TRIGER作品や京都アニメーション作品のような、精微すぎる作画や彩色によって生まれる端正なアニメーションではないが、どことなく原作に溢れているコミカルな部分をもアニメーションに仕上げている。そのテイストは、例えば『北斗の拳』『ドラゴンボール』『キン肉マン』に近いといえよう。

 そんな本作のキャラクターを演じるのも、声優界から選りすぐられた名優たち。今回注目するのは、本作内でも中心となるブリュンヒルデを演じる沢城みゆきだ。

 本作アニメにおけるブリュンヒルデは、人間側の英雄を選別し、ここまでのところバトルに参加することはなく、あくまで外側から神vs人間の最終闘争(ラグナロク)を見つめているのだ。

 本編内では大仰しいセリフ回しと表情を見せつつ、ストーリーの語り部としてナレーションも務める。落ち着いたトーンで自身と共にするゲルと会話しつつも、時折見せる強烈な顔芸や口の悪さが出てくる、その端正な顔立ちからはとても想像できないほどに。

 「やはり神は、人間よりもはるかに“キレやすい”」(原作1巻より)という自身の言葉が、半神であるブリュンヒルデ自身にも多少影響が出ているのでは? などと勘繰りたくもなる。

 そんな彼女を演じるために沢城が気を付けたのは、「声を当てるときは、すでに絵は美しいので、声としても上品さを損なわず、本当に『クソジジイ』と思いながら言う」ということ(※1)。美しさと汚さという対になったフィーリングを表現するということでもある。

アニメ「終末のワルキューレ」 PV1

 沢城の声色には、彼女独特の上品さやツヤっぽさがある。よく彼女を評するときには幅広い演技力と多種多様な声色を使い分ける点をあげられ、「七色の声をもつ」とも評されるが、ネットラジオなどで出演した際に聞ける沢城の声は、少しだけ低めで甘いトーンなのが分かる。

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