『ドラゴン桜』“東大専科俳優”は今後映画で活躍? 続々控える出演作からキャリアを占う

『ドラゴン桜』生徒役俳優は今後映画で活躍?

 そういった意味では、第2シリーズにおいてYouTuberをしながら受験勉強に励み、優秀な弟へのコンプレックスにも打ち勝ちながら見事東大合格を勝ち取った天野役を演じた加藤清史郎は、子役時代から培った豊富な経験値の持ち主であり、その能力的には「二次試験」の突破はほぼ確実な位置にある。昨年の事務所移籍以降は“子役俳優”からの脱皮を図り、群雄割拠の若手俳優界へと果敢に挑むスタンスも成功していると見え、今回の「共通テスト」でも同世代のなかであえて一歩引いたポジションを演じられたことは大きく、合格間違いなしだ。

 なんにせよ今回の生徒役の顔ぶれは、加藤はもちろんのこと、全員がすでに何らかのかたちでその素質を発揮しているという、紛れもない少数精鋭であることは言うまでもない。アイドルグループの一員として活躍してきたKing & Princeの高橋海人は、第1シリーズの山下のポジションを引き継ぐ役目を果たしていたと捉えるならば、若手俳優界のみならずジャニーズを背負う存在に成長してもらう必要がある。ドラマ開始当初の裏表ありそうな役柄よりも、姉と2人でラーメン屋を切り盛りしながら勉強に励む苦労人の姿のほうがよく似合い、感情的な演技も存分に引きつけてくれる。『ドラゴン桜』より前に出演した『姉ちゃんの恋人』(カンテレ・フジテレビ系)のような愛嬌ある役柄もぴったりであり、山下の『野ブタ。』に匹敵するハマり役がくれば楽しみしかない。

 もちろん元欅坂46から女優としての転身を成功させた平手友梨奈も同様だ。受験生というポジションに加え、劇中ではオリンピック候補と謳われるバドミントンの天才としての苦悩を同時に演じ切った平手。とくに欅坂時代からある力強い目付きは、象徴的なアップショットを多用する福澤演出との相性が良い。『ドラゴン桜』最終回の直前には、数カ月の公開延期を経て出演映画『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』も公開を迎えており、その点では第1シリーズの長澤同様、生徒役の中でも特に期待値が大きい1人であることがよくわかるほどだ。

『かそけきサンカヨウ』(c)2020 映画「かそけきサンカヨウ」製作委員会

 第1シリーズ組は直後に連続ドラマの出演が相次いだわけだが、第2シリーズ組は映画での活躍が主となるのかもしれない。“東大専科”のなかでも、演技力という一点においてずば抜けたものを見せてくれた後列の3人、鈴鹿央士、志田彩良、細田佳央太は、すでにインディーズからメジャーまで幅広く映画の舞台で活躍している逸材だ。まもなく主演映画『星空のむこうの国』が公開される鈴鹿は、秋には出演作『かそけきサンカヨウ』が待機。同作では志田と再共演を果たす。学習障がいを持つ健太役を演じた細田は、現在『青葉家のテーブル』が公開中で、8月には『子供はわかってあげない』も公開される。

『子供はわかってあげない』(c)2020「子供はわかってあげない」製作委員会(c)田島列島/講談社

 そして、何の目標も持てない凡庸な高校生活から東大受験を目指し、受験に失敗するも自分の意思で私大合格を叶えたことで、ある意味で第2シリーズのテーマのほとんどを1人で体現し切った早瀬役を演じた南沙良。彼女はこの中でも一番飛躍が期待されている存在ではないだろうか。最終回で大トリを飾った新垣と同じ事務所で、“第2のガッキー”とも言われている。カップヌードルのCMの9分割画面はインパクト抜群であるが、次に彼女の演技を堪能できそうなのは来年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』だ。つまり新垣と、『ドラゴン桜』後に大河をステップアップにした長澤、国民的人気女優2人の歩んだ道をなぞることになるわけだ。

 もちろん第1話から活躍を見せ、終盤には“東大専科”に加わった岩井&小橋を演じた西垣匠と西山潤も忘れてはなるまい。連続ドラマとしては貴重なほど、続編を作る意義も時代に合わせた変化もしっかりと捉えた『ドラゴン桜』の第2シリーズだけに、第3シリーズへの期待が寄せられるのも当然のことだ。その時には今回の第1シリーズの生徒たちと同じように、凛々しく成長を遂げた瀬戸や岩崎、早瀬、天野、健太、小杉、藤井、そして岩井&小橋が一堂に会することを期待しておきたい。

■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『子供はわかってあげない』
8月13日(金)テアトル新宿先行公開
8月20日(金)全国公開
出演:上白石萌歌、細田佳央太、千葉雄大、古舘寛治、斉藤由貴、豊川悦司
監督:沖田修一
脚本:ふじきみつ彦、沖田修一
音楽:牛尾憲輔
原作:田島列島『子供はわかってあげない』(講談社モーニングKC刊)
企画・製作幹事:アミューズ
配給:日活
制作プロダクション:オフィス・シロウズ
(c)2020「子供はわかってあげない」製作委員会(c)田島列島/講談社
公式サイト:agenai-movie.jp
公式Twitter:@agenai_movie

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