芳根京子「演じることは生きること」 『Arc アーク』での経験で乗り越えた“悩みの時期”

芳根京子、『Arc アーク』での経験を語る

 映画『Arc アーク』が6月25日より公開中だ。『愚行録』『蜜蜂と遠雷』の石川慶監督最新作となる本作は、SF作家ケン・リュウの短篇小説『円弧(アーク)』(ハヤカワ文庫刊)を映画化したもの。人類で初めて永遠の命を得た女性・リナの人生を描く。

 遺体を美しい姿のまま永久に保存する技術“プラスティネーション”に携わる主人公・リナを演じたのは芳根京子。ストップエイジング技術により、30歳の若々しい身体のままに永遠の命を得たリナの17歳から100歳以上までを演じ抜いた芳根に、『Arc アーク』での石川監督との共同作業、俳優という職業観から未来予想図まで話を聞いた。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】

「これがお芝居なんだ」

ーー石川慶監督からの出演オファーを一度は断ったそうですね。

芳根京子(以下、芳根):「やるからには全力でやる」というのは演技をする上でずっと念頭に置いていることなんですが、この作品のオファーを最初にいただいたときは、自分の全力を出しても力不足だと思って一度お断りしていたんです。だから、今回は自分にとってもすごく大きな挑戦でした。

ーー撮影を終えた今、振り返ってみて達成感はありますか?

芳根:今の自分にできることは全部やったと思います。『Arc アーク』では、自分の感情に一切ストップをかけることがなかったんです。お芝居を超えるなにかが現場にあった気がします。これで力不足だと言われたら、それはたぶん、私の人としての経験がまだ足りていないんだと思います。

ーー現場はどんな雰囲気だったんですか?

芳根:ほぼずっとこもりっきりの状態で香川で撮影をしていたんです。撮影が終わって、家に帰ったときに、ようやく我に返る感覚がありました。自分の緊張の糸が切れないように1カ月ずっと集中していたんだとそのとき分かりました。実際、その後に風邪を引きました(笑)。

ーー一気に疲れがどっときたのかもしれないですね。

芳根:撮影はやりきったんですが、まだまだこの映画には先があるようにも思います。私自身もまだ、この作品のすべてを理解しているわけではない気がするんです。撮影が終わってこうしてお話しをしている今も、この作品のことがずっと心にあって、まだちょっとふわふわしている状態です(笑)。「不思議な作品に出会えたな」「そんな作品に参加できて嬉しかったな」と毎日思っているし、それってすごく幸せなことだとも思います。自分がリナのような役をやるとはこれまで想像もしていなかったので、これから自分がどういう役に出会えるのか、より一層楽しみになりました。

ーー芳根さんがそこまでこの作品に集中できたのは、『Arc アーク』の独特の世界観も要因にあるように感じます。芳根さんは最初脚本を読んで、どのように演技でその世界観を表現していこうと思いましたか?

芳根:脚本を読んだ当初は、どんな絵になるのか想像が全くできなくて。でも、石川監督にロケ地や小道具の写真を見せてもらったときに、一気に開けた感覚がありました。それからは台本を読むだけで作品の世界観にすんなり入れました。困ったときや悩んだときは石川監督に相談して、二人三脚でやらせていただきました。

ーー芳根さんにとって、石川監督の存在は大きかったんですね。

芳根:石川監督は、“空気”で会話できる方というか。こういう作品って、たくさんコミュニケーションをとることも大事ですが、一方で全てを言葉にすると想像の余地がなくなってしまうと思うんです。石川監督は言葉だけでなく、目や雰囲気で伝えてくださったり、あえて全てを説明されなかったんです。でも、感覚でちゃんと伝わり合っていると確信できたから、すごくのびのびやらせていただきましたし、「これがお芝居なんだ」とリナを演じているときに思いました。

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