芳根京子「演じることは生きること」 『Arc アーク』での経験で乗り越えた“悩みの時期”

芳根京子、『Arc アーク』での経験を語る

「人生3周目だと思ってやっています(笑)」

ーー芳根さん演じるリナは、30歳の姿のまま、永遠の人生を生きるという少し変わった設定です。

芳根:10代、30代、30代の外見で中身は89歳以上という3つのブロックで考えていました。撮影も小豆島で暮らすシーンの前後で完全に分かれていたんです。毎日、そのシーンで求められていることはなんなのか追求することを積み重ねていきました。自分でもまだ分かっていないリナの感情があったとしても、石川監督と2時間以上かけて綿密にやり取りをしました。そういう作業に長い時間をかけられることって、これまでの現場ではあまりなかったので、『Arc アーク』の撮影で気づいたことはたくさんありました。毎シーン、石川監督やほかのスタッフの方々や共演者の方々など、全員の手でリナを作っていきました。自分一人だけだったらリナという人物はすごく縮こまってしまっていただろうと思います。

ーー『Arc アーク』でリナを演じ終えた今、プライベートにも変化はありましたか?

芳根:普通に生きていたら、「私、今生きてる!」ってあまり言わないじゃないですか? でも、ふとした時に自分は今この瞬間を生きているんだと思うようになりました。やっぱり忙しくなると見落としがちなことではあるんですが、ふと休んだときとか、朝ゆっくり寝てぱっと目が覚めたときにすごく実感します。そうすると、なんだか1日1日が楽しく過ごせるんです。そういえば、石川監督に「もうすっかり抜けたね」って言われて。実は、この作品のお話をいただいたときは、自分の中でいろいろと悩んでいた時期だったんです。その姿を石川監督は全部見ていたから、そうおっしゃったと思うんですが、そうした変化もこの作品に出会ったおかげだと思います。

ーー芳根さんにとって“演じること”とは?

芳根:演じることは生きること。“演技”とは言いますが、『Arc アーク』だったらリナとして生きること。だから、先ほど言った「あ、今生きてる」って、「あ、芳根京子が今生きてる」ということなんだと思います。やっぱり、どの現場でも役名で呼ばれることが多いので、作品が続いて家族や友達に会わない時期が続くと、自分の名前で呼ばれることが少なくて(笑)。そうすると、自分が行方不明になっちゃうんです。『Arc アーク』でも10代から89歳以上まで生きて、『べっぴんさん』(NHK)でも59歳まで演じたので、私は今が人生3周目だと思ってやっています(笑)。おもしろい職業ですよね。自分は今、20代ですが、30代、40代が、演じてきた役のおかげでどこか想像できるようになるというか。芳根京子自身が大きな木だとしたら、今まで演じてきた役はその枝のようなもので。その枝が今後もいっぱい、いろんな方向に広がって、もっと大きな木になったらいいなと思います。

ーーいろんな人生を生きるというのは、ハードな部分もあるかと思います。芳根さんがこれまで女優を続けてこれたのはなんでだと思いますか?

芳根:なんでだろう……。シンプルに楽しいし、お得じゃないですか(笑)? ちょっと質問とズレてしまうかもしれないんですが、いつも役を演じているときは、自分自身ではその役の感情を体験したことはないけれど、もし少し道が違っていたら出会っていた感情なのかなと考えるときはあります。もう一つお芝居の面白いところは、やっぱり、誰とどんな場所でお芝居をするかですごく自分の演技も変わるところです。周りの方のお芝居を見て、出てきた感情に嘘をつかないようにするというのは大切にしていることです。ちょっと盛ったりするだけでそれは演技ではなく嘘になってしまうので。だから常に、私生活でも湧き出る感情を止めないようにしています。自分が普段からうるさい原因の一つですね(笑)。

ーー『Arc アーク』は未来を描いているSFですが、芳根さんはどんな未来を楽しみにしていますか?

芳根:まずはマスクがない世界になってほしいです。もし神様が今までの生活がどれだけ幸せだったかを分からせようとしているんだったら、「それはもうよくわかりました!」という気持ちです(笑)。今、こういうご時世になって、友達とご飯に行くことや家族で旅行に行くこととか、会いたいときに会いたい人と会えるということがどれだけ恵まれていたことか、実感しています。でも、それを知った今の人たちはみんなすごく強くなっていると思うんです。だから自分も、もちろんこれからもずっとお芝居したいですし、うちは家族がすごく仲良しなので、いつかは家庭を持ちたいというのも夢の一つです。よく連絡を取っている兄とは「家族みんなでこれからも仲良く過ごしたいね」なんて話したりしています。意外と改まってそういう会話をする機会ってこれまでなかったようにも思いますが、本当にそれが今は1番の願いです。

■公開情報
『Arc アーク』
全国公開中
出演:芳根京子、寺島しのぶ、岡田将生、清水くるみ、井之脇海、中川翼、中村ゆり、倍賞千恵子、風吹ジュン、小林薫
原作:ケン・リュウ『円弧 アーク』(ハヤカワ文庫刊 『もののあはれ-ケン・リュウ短篇傑作集2』より)
脚本:石川慶、澤井香織
監督・編集:石川慶
音楽:世武裕子
配給:ワーナー・ブラザース映画
製作プロダクション:バンダイナムコアーツ
製作:映画『Arc』製作員会
2021年/日本/127分/スコープサイズ/5.1ch
(c)2021 映画『Arc』製作委員会
公式サイト:http://arc-movie.jp/
公式Twitter:@Arc_movie0625

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<応募締切>
7月9日(金)

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