『クワイエット・プレイス』シリーズ大成功までの道のりを辿る 第3弾の可能性は?
『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』での進化
当然、前作でこれほどの世界的なヒットを繰り広げると、観客の続編への期待度も高まる。実際に、ジョンは続編を手がけるうえでプレッシャーがあったそうだ。「実は、続編に関しては、最初は『No』とスタジオに答えていたんだ。だから、これほど(続編が)個人的なものになるとは思わなかった」
そんな個人的な続編のストーリーを、前作のストーリーと繋げるきっかけとなったのが、前作でのサイロ(家畜飼料の貯蔵庫)のシーン。「前作でのサイロの上から焚き火をして、別の場所で焚火をしている人たちにシグナルを送っていたんだ。その時点では、この焚火の反対側の人は、どんな人々が住んでいるのだろうかと考えていただけだったから、続編のことは決して考えなかった。だが、続編のことが頭に浮かんだ際に、他の場所に住んでいる人々とアボット家族を唯一つなげる方法は、アボット家族がこれらの火のある方向に向かうことだった」と指摘するジョン。そのアイデアも、中学生時代に中世の人々が、火をつけて連絡を取り合ったり、生存者を確認する手段として使っていたことにヒントを得ていたという。
続編でも、前作に引き続き、音と静寂がある意味、キャラクターのように扱われている。「音は映画の一部であり、僕も細心の注意を払う必要があることは分かっていた。ただ、前作でその(音を立てたら即死という)アイデアは、僕が思いついたものじゃないんだ。完成した脚本は、2人の脚本家スコット・ベック、ブライアン・ウッズが書いたスペック・スクリプト(委託されていない末承諾の脚本)を僕が改稿したかったものの、(すでに)彼らのアイデアはパーフェクトだった。基本的に、家族や他の人々が何かによって狩られるという発想、音を出すと死ぬという発想は、とても賢く、創造的なものだった。そして、そこに僕は自身の個人的な父親体験を加えたんだ。その過程で、本当の沈黙が何であるか、いかに静寂を保つか掘り下げていったんだ。つまり僕が言いたいのは、僕がサウンドデザインをする前に、音はキャラクターになっていたんだ。僕にとっては、音自体は大きなキャラクターとして受け止め、そして、そのキャラクターをいかに大きくさせるかが、続編ではある意味、音というキャラクターの進化過程を描いていたのかもしれない」。
続編では、ミリセント演じるリーガンが成長し、模範的な行動をし始めていくが、彼女自身はどんな模範的な人物になりたいと思っているのか。「私の成長期には、自分のような聴覚障害者で模範的な人物はいませんでした。だから、模範になる人と出会う機会はありませんでした。だから、聴覚障害者のコミュニティだけでなく、若い世代の一員として、活躍できることはとても名誉なことです。この若い世代の一員として、何が可能かについて社会を教育し、それを正しい方法で行おうと思っています」と語るミリセントのそんな聡明な返答が、『クワイエット・プレイス』第3弾では、彼女がリーダー的な存在になっているのではないかと想像してしまう。
『クワイエット・プレイス』第3弾の可能性は?
同シリーズ第3弾の可能性についてジョンは、「僕は考えているよ。映画全体ではないけれどね。次に何が起こるかについてのアイデアだけならあるんだ。前作では、もし色々試せるならばと、面白いアイデアはたくさん頭に浮かんだが、僕は続編をやるとは思っていなかった。でも続編では、そんな教訓を学んだんだ。だから、続編の製作中に、なにかアイデアが浮かぶたびに、ノートに書き出していて、もし彼ら(スタジオ)が僕に第3弾の制作の許可をしてくれたら、その書き出したアイデアから、第3弾のアイデアを模索してみることができると思うんだ。この続編には、イースター・エッグ(復活祭の卵)が使われていて、もし第3弾を手がけるのならば、『ああ、あれがイースター・エッグの伏線だったんだなぁ』と見返すことになるかもね」と第3弾の可能性を示唆してくれた。
現在、上記のジョンの発言の通り第3弾はまだアイデアの段階のようでスピンオフになるか、それともこれまで描かれてきた同シリーズの第1弾、第2弾に続くアボット一家を描いた続編作品になるかは分からないとも語っている。内容の詳細は明かされていないものの、2023年に公開されることがパラマウントより発表されている。
■細木信宏/Nobuhiro Hosoki
海外での映画製作を決意し渡米。フィルムスクールに通った後、テレビ東京ニューヨーク支局の番組「ニュースモーニングサテライト」のアシスタントとして働く。現在はアメリカのプレスとして働き13年目になる。
■公開情報
『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』
全国公開中
監督・脚本・製作・出演:ジョン・クラシンスキー
製作:マイケル・ベイ、アンドリュー・フォーム、ブラッド・フラ-
出演:エミリー・ブラント、ミリセント・シモンズ、ノア・ジュプ、キリアン・マーフィー、ジャイモン・フンスー
配給:東和ピクチャーズ
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公式サイト:https://quietplace.jp/
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