鈴木浩介、中村倫也、伊武雅刀は“その後のマクベス”? 『コントが始まる』大人たちの優しさ

『コントが始まる』マクベスに必要だった大人

 人生は伏線回収の連続であり、そこで得られた人と人との縁を大切にしていくことで、他人から失敗だと思われる人生だって、前を向いて生きていくことができる――。先日最終回を迎えた『コントが始まる』(日本テレビ系)は、数々の伏線と回収を見事に決めた金子茂樹による脚本をもとに、名もなき若者たちの友情の温かさと挫折のほろ苦さ、“推し”を持つことの大切さ、人生のままならなさや美しさを静かに力強く描いたドラマだった。

 頑張っても報われないマクベスの春斗(菅田将暉)、瞬太(神木隆之介)、潤平(仲野太賀)、頑張ることで傷つくことを恐れて次の一歩が踏み出せない里穂子(有村架純)、頑張る人を支える自分に欺瞞を感じてしまっているつむぎ(古川琴音)らの苦しみと再生が描かれていく一方で、筆者が惹きつけられたのが、彼らのまわりにいる大人たちだった。これは筆者自身の年齢がそちらに近いせいである。

 たとえば、マクベス3人の高校時代の恩師である真壁(鈴木浩介)。「遮二無二やれよ」が口ぐせの厳しい教師だが、春斗と潤平が文化祭で披露したコントを見て絶賛し、彼らがコントの道に進むきっかけを与えていた。卒業後も春斗たちのことを気にかけており、ライブ会場にも足を運んでいた。潤平から相談があると連絡があれば、忙しい合間を縫ってやってくるし、親身になって話を聞いてくれていた。

 真壁はかつて大学で落語研究会の副部長を務めており、若い頃は夢を追いかけて仲間と共同生活をしていた。マクベスに自分たちの若い頃を重ねてシンパシーを抱いているようだが、だからといって無責任な励ましをすることもない。潤平から解散について率直な意見を求められると、ストレートに「解散したほうがいいと思うぞ」と言う。

「これまでもいろいろ辛かったと思う。でも、18から28までと、これから先の10年は、別次元の苦しみだぞ」

 夢を追いかける辛さを知っている真壁だからこそ言える、大人の意見だ。同時に、自分がそう言ったことに胸を痛める優しさもある。解散を決めたマクベスに会ったときは、このようにエールを送っていた。

「俺なんて夢諦めて、自分の可能性を信じきれなかった人間なんだ。10年間、まわりの雑音に流されることなく、愚直に夢を追い続けたお前らのほうが、ずっとずっと偉いし、ずっとずっとすげえんだからな」

 真壁は教師と元生徒という立場ではなく、ひとりの人間として春斗たちに敬意を持っていたことがわかる言葉だった。マクベスが最後の単独ライブで披露した新作コント「引っ越し」の中で、潤平に「むにむに遮二無二、元気もりもり、真壁引越センターでした!」と言わせたのは彼らなりの恩返しだったのだろう。

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