『コントが始まる』マクベス、ついに解散 菅田将暉演じる春斗が流した涙の意味
『コントが始まる』(日本テレビ系)の開幕コントはマクベスの人生と呼応している。最終話の「引っ越し」では、春斗(菅田将暉)演じる男性が瞬太(神木隆之介)演じる女性に「じゃあ、どうして俺のプロポースを受けたんだ?」と問う。「魔がさしただけよ」と答える女性。そこで春斗は、呆然としてセリフを飛ばしてしまう。幸いにもリハーサルでのこと。
「俺にとってマクベスとは、いったいなんだったのか」
最終話に虚しく響くのは、菅田将暉演じる春斗のそんな自問である。おそらくこれから何度問いかけてもやりきれない、潤平(仲野太賀)と瞬太を巻き込んでまで捧げたこの10年の意味。しかし、このドラマの全10話(2カ月)がとても濃密であったこと、そしてマクベスの10年がいろんな縁や物語を生み出してきたのは回想で語られる通り、私たちの見てきた通りだ。
10年の意味ーー。それは時に、言葉や感情以上に“モノ”が雄弁に語るだろう。例えば「ラーメン」。第1話で明かされた「春斗はラーメンを食べた後に必ず大事な話をする」という決まりごと。春斗と潤平がコンビを組むときも、解散を決めるときも、春斗はラーメンを食べてからその決意を話した。解散ライブを終えたあとも、マクベスは当然のようにラーメン屋に漂着する。「マクベスってさ、いつ解散なの?」と瞬太が問う。「マクベス的には、全員がラーメン食い終わったときが解散の瞬間なんじゃない?」と潤平が答える。おのずと、ラーメンを食べ終わったあとに放たれる春斗の言葉に注目が集まる。
「意外とうまかったな」と春斗。大事な話をしないことに潤平と瞬太はツッコむ。期待を裏切る春斗のこの言葉は、まだ解散の実感が湧かないということでもあるかもしれないし、「意外とうまかった」が全てだったとも言えるだろう。
「粉チーズがかかったミートソーススパゲッティ」は瞬太とつむぎ(古川琴音)をつなぎ、つむぎの首にかかる「ストップウォッチ」は里穂子(有村架純)との絆を感じさせる。そんな里穂子は、会社に飾られている「花」に勇気をもらっている。それらのモノには、過去に彼女たちが獲得してきた、簡単に言語化できない豊かな記憶や感情が宿っている。
では改めて、春斗には何が残ったのか?