『菅田将暉ANN』と『マクベスの23時』にも潜んでいた 『コントが始まる』の伏線回収

『コントが始まる』の伏線回収を掘り下げる

 4月より日本テレビ系で放送中のドラマ『コントが始まる』が、6月19日放送の第10話で最終回を迎える。菅田将暉、仲野太賀、神木隆之介、有村架純、古川琴音ら豪華キャストの共演はもちろん、人気脚本家・金子茂樹によるオリジナルドラマということもあり、放送前から大きな注目が集まっていた本作。いざ放送が始まると、その伏線回収の多い物語や脂が乗ったキャストの見応えのある芝居も相まって、SNSを中心に大きな話題を呼んだ。

 そんな本作だが、実は高岩春斗役の菅田は、自身がパーソナリティを務めるラジオ番組『菅田将暉のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)で、以前から張っていた、学生時代からの伏線を回収している。今回は、そんな『コントが始まる』にまつわる伏線を目いっぱい回収できる番組、『菅田将暉のオールナイトニッポン』、そしてHuluスペシャルコンテンツ『マクベスの23時 〜皆様の質問に本当に答えます〜』の繋がりについて掘り下げていく。

『菅田将暉ANN』と本編の繋がり

 菅田は以前から、『菅田将暉ANN』内で自身の学生時代について語る際、折に触れて「文化祭で『プロポーズ大作戦』のちびまる子ちゃん版のパロディ演劇で花輪くん役を演じた」と語っていた。『プロポーズ大作戦』(フジテレビ系)といえば、本作の脚本を務める金子茂樹の代表作だ。その演劇「みぎわさんのプロポーズ大作戦ザ・ラストハレルヤチャンス」は菅田の芸能活動の原体験だったようで、自ら脚本も手掛けたという。そんな彼が演じる高岩春斗らのコントトリオ「マクベス」結成のきっかけも文化祭でのコントで、その当時から結成後まで、ほぼ全てのネタを書くのも春斗の役割だ。この巡り合わせとも言える人生の伏線回収が、本作では行われている。

 また、『菅田将暉ANN』のオリジナルグッズを展開してきたファッションブランド「NAGORI」もこっそりと本編に登場している。リスナーから案を募集し、大のファッション好きとして知られる菅田がその案をまとめ上げ、これまでパジャマとパーカーを制作。しかし、実は菅田も知らぬ間に「NAGORI」が本作の劇中にも登場していたことが、先日の『菅田将暉ANN』で語られていた。それは劇中で春斗のみならず、同居するマクベスの3人が頻繁に飲む糖質オフの発泡酒のブランドロゴ。TV放送ではロゴを視認することは難しいが、本作と連動するマクベスの公式Twitterアカウントで赤文字の「NAGORI」ロゴを確認できる写真が、後日になって投稿されていた。そんなリスナーだからこそ楽しめる“さりげないオシャレ”的な伏線も張られている。

『マクベスの23時』と本編の繋がり

 本編のTV放送後に、Huluで独占配信されている『マクベスの23時』も、本作をさらに楽しむ上で欠かすことのできないコンテンツだ。番組は、中浜里穂子(有村架純)の働くファミリーレストラン「メイクシラーズ」で過ごす、マクベスの何気ない日常を映すというもの。これまで第1〜5夜まで配信されており、先述のマクベス公式Twitterアカウントと連動し、「#マクベスに聞きたいこと」を募集。実際にマクベスの3人がその質問に答えていく。約20分ノンストップで行われるそれは、本当に彼らの会話をそばで聞いてるような感覚で楽しめる、アドリブ性の高い極上の会話劇だ。

 それに加えて、さらに番組内容が本編のマクベスのコントと繋がるという要素もある。例えば第6話で、TVアニメ『アルプスの少女ハイジ』の主題歌を歌いながら公園のブランコに乗るほど泥酔した里穂子と、彼女に絡まれた春斗の会話のシーン。自暴自棄になった里穂子が「いつ地球が滅亡してもいい」とこぼすのに対し、春斗は「まぁしばらく滅亡しないでしょうからねぇ」と答える。この「地球がもし滅亡するとしたら」というのは、『マクベスの23時』第1夜で朝吹瞬太(神木隆之介)が設定した例題としても3人が話した内容だ。美濃輪潤平(仲野太賀)が「希望者を募集してフェスをやる」と答えるなど、マクベスの3人が思い思いの地球滅亡直前の過ごし方で盛り上がった。第1夜を視聴した上で本編第6話での春斗の発言を聞くと、雑談と本編が緩やかな伏線になっており、有村の泥酔演技の巧さも相まってさらに趣深いシーンとなっている。

 また、本編第7話で描かれるコント「無人島」も、『マクベスの23時』第1夜で春斗がお題の例として出した「無人島に持っていくなら」と繋がっている。このコントは春斗がライターを持って来るのに対し、潤平は何も持たず、瞬太が国語辞典を持ってくるというもの。「ずっと読んでても飽きないし、時には勇気づけられることもあるかもしれない」という予想外の理由を語る瞬太に対し、「キモいんですけどこいつー!」と春斗がツッコむ。

 一方、『マクベスの23時』第1夜でこのお題について話した際には、何か1つしか持っていけないとしても「夜が寒いから、お気に入りのコアラの総柄パーカーを持っていく」と答えた瞬太に対し、潤平が思わず「キショ」とツッコんで3人は大爆笑。仲が良い分ぶつかることも多い春斗と潤平の間で、いつも雰囲気を和やかにするきっかけを作りつつも、考え方が少し斜め上を行く瞬太の憎めないキャラクター性が出ているシーンだ。また、本編と繋がることで、視聴者に「あの会話がきっかけでコントを作るという伏線だったのか!」と考えさせる。単純に生感のある会話劇が楽しめる別作品ということだけでなく、しっかりと本編と繋がることで双方向性が生まれ、作品自体だけでなくマクベスも次第に好きになっていくような“沼”の要素がある。

 加えて、『マクベスの23時』と『菅田将暉ANN』だけの繋がりも。本編第1話放送後の『菅田将暉ANN』に、仲野と神木がゲスト出演 。仲野は菅田と公私共に10年ほどの付き合いがあることをたびたび語っており、番組へのゲスト出演も3回目だ。リスナーとのやり取りも慣れている仲野は、「同じ93年生まれでも成功している菅田と神木に嫉妬している」という設定にあえて乗っかってトークを進める。そして特別企画「ドラマが始まる」のコーナーの際、菅田が改めて2人に趣旨を説明。この後ドラマが始まりそうな瞬間までの、「ドラマのイントロ部分」の脚本をリスナーから募集し、3人が全力で演じるという趣旨をすぐに理解する神木に対し、サービス精神旺盛な仲野は設定に乗っかり、説明が全く理解できないというボケを連発してブースを沸かせた。

 その後配信された『マクベスの23時』第2夜では、「過去に囚われたくないから前日食べたものすら覚えない」という潤平の設定が次第にエスカレート。「彼女は誰だっけ?」「マクベスって?」と『菅田将暉ANN』と同じボケをすることで、またもや爆笑を巻き起こした。つまり、お笑いで言うところの“天丼”だ。その一度目である『菅田将暉ANN』を聴いていることで、より『マクベスの23時』も楽しめる流れになっている。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる