吉田羊が体現する現代女性の生き様 『生きるとか死ぬとか父親とか』で見せる“軽さと重さ”
一方、『きれいのくに』は、初回から回を重ねるごとに、どんな展開になっていくのかわからない、今までにない作品であった。吉田は、美容師をしていてカメラマンの恋人と暮らしていたが、ふたりの間は険悪となり、平原テツ演じる税理士と出会い結婚しているという役を演じた。なぜかある日を境に、姿が30代、20代へと若返り、夫が困惑をするとストーリーが一気に展開する。
見ているものは、この先がどうなるのかまったく見えず、困惑していたところに、この吉田と平原のパートが、高校生たちに見せるための「啓発映画」であったことが発覚する。吉田の出演は全体からすると短かったし、ファンタジックで予想もつかない展開であったが、ここでもやはり妙なリアリティと説得力があった。
今年はほかにも、NHK BSプレミアムの宮城発地域ドラマ『ペペロンチーノ』や、WOWOWの『がんばれ!TEAM NACS』にも出演。
『ペペロンチーノ』では、草なぎ剛演じるイタリアンレストランのオーナーシェフの妻を演じていて、出演時間は物語上短いながらも、意味のある役を演じていた。
また『がんばれ!TEAM NACS』では、TEAM NACS相手に、戦隊ヒーロー作品『バック・トゥ・ザ・戦隊・フューチャーズ』の中の悪役キャラクターの女帝デロリアンを演じて視聴者を驚かせた。本作は、劇中劇とその劇を取っているバックステージにも焦点をあてた、フェイクドキュメンタリーのような作品となっており、撮影の合間の、演技をしていないかのような自然な吉田とTEAM NACSのやりとりも注目だ。不思議で独特な雰囲気の作品となっている。
2010年代に注目されはじめた当初も大ブレイクと話題になったが、今年もオーソドックスな作品だけでなく、挑戦的な作品にも次々と出演している。今の吉田羊からも目が離せない。
■西森路代
1972年、愛媛県生まれのライター。大学卒業後は地元テレビ局に勤め、30歳で上京。東京では派遣社員や編集プロダクション勤務、ラジオディレクターなどを経てフリーランスに。香港、台湾、韓国、日本のエンターテインメントについて執筆。また2016年から4年間ギャラクシー賞の選奨委員も務めた。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に『わたちたちのおしゃべりの記録』(駒草出版)『「テレビは見ない」というけれど』(青弓社)など。
■放送情報
ドラマ24『生きるとか死ぬとか父親とか』
テレビ東京系にて、毎週金曜深夜0:12〜放送
※テレビ大阪のみ、翌週月曜深夜0:00〜放送
原作:ジェーン・スー『生きるとか死ぬとか父親とか』(新潮社刊)
主演:吉田羊、國村隼、田中みな実、松岡茉優、富田靖子、DJ松永(Creepy Nuts)、オカモト“MOBY”タクヤ(SCOOBIE DO)、森本晋太郎(トンツカタン)、ヒコロヒー
オープニングテーマ:高橋優「ever since」(unBORDE / Warner Music Japan)
監督:山戸結希、菊地健雄
シリーズ構成:山戸結希
脚本:井土紀州
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:佐久間宣行(テレビ東京)、祖父江里奈(テレビ東京)、半田健(オフィスアッシュ)、平林勉(AOI Pro.)
制作:テレビ東京、オフィスアッシュ
製作著作:生きるとか死ぬとか父親とか」製作委員会
(c)「生きるとか死ぬとか父親とか」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/ikirutoka/
公式Twitter:@tx_ikirutoka