『コタローは1人暮らし』母親の行方が明らかに 横山裕だからこそ体現できた優しき主人公像

『コタローは1人暮らし』横山裕の主人公像

 あまりにも辛いことや悲しいこと、どうにもならないことに出会ったとき、生きていく気力を失いそうなとき……「どうして生まれてきたんだろう」、そんなことを考える。その場しのぎでも、どうにか答えを見つけながら、自分を納得させながら人は生きている。人生はその繰り返しだ。『コタローは1人暮らし』(テレビ朝日系)第8話では、コタローの母が残した悲しい質問が明かされた。

 「どうしてママは生まれてきたのかな」。コタロー(川原瑛都)は、母上(紺野まひる)から聞かれたこの質問の答えを知りたいと、狩野(横山裕)に尋ねる。「わらわは答えてあげることができなかった」と後悔まじりに言うが、狩野もまた答えることができない。コタローは答えを求めて、まわりの大人たちに次々と同じ質問を投げかける。答えに詰まる者、論点がずれる者……そんな中、子を持つ父である田丸(生瀬勝久)は「生まれてきた理由」を見つけていた。「息子に会うために生まれてきた」と、迷いなく力強く言い切った。

 きっとコタローの母も、コタローに会うために生まれてきたんだという田丸に、コタローは「だったらわらわに聞くはずがない」「質問の答えは、少なくともわらわではない」と返す。田丸の答えのおかげでそれが分かったと、前進したというコタローだが「母上が生まれたわけは、わらわに会うためではない」だなんて、口にするにはあまりにも切ない言葉だ。大好きな母上の「生まれた理由」でありたいと、きっと思っているはずなのに。

 コタローは、狩野とともに祖父母のお墓参りへ向かう。祖父母の記憶がないというコタローは、いつか母上に会ったら話を聞いてみたいと話す。ふと狩野が墓石に目をやると、コタローが口にした母上の名前ーー「小夜梨」の文字が刻まれていた。コタローの生活費が母親の保険金で賄われていることから、分かってはいた事実なのだが……改めて現実として突き付けられると、言葉を失うほどにショックだった。

「もし母上がここにお参りに来たら、わらわのことを伝えていただけるとありがたい。ちゃんと元気に生活していると」

 小さな小さな手を合わせ、じいじ殿とばあば殿に近況を伝えるコタローの姿が、あまりに健気でたまらなくなる。狩野は、コタローの母上がそこにいるという想いで、墓石の横からコタローを見つめていたのだろうか。強く生きるコタローの姿が、母上に届いていますようにと願わずにはいられない。

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