『コタローは1人暮らし』母親の行方が明らかに 横山裕だからこそ体現できた優しき主人公像

『コタローは1人暮らし』横山裕の主人公像

 「母上にまた会えるであろうか」。コタローの無垢な瞳とまっすぐな願いに、嘘をつくことはどれほど苦しいだろう。それでも狩野は意を決し、優しい嘘をついた。その姿に、迷いは感じなかった。

 夜。すやすやと眠るコタローを、狩野は神妙な面持ちで見つめていた。美月(山本舞香)からの電話に声を震わせながら「この嘘はつき通す」と、これからお墓参りに行くときは必ず一緒に行くと誓う。コタローが育っていく姿を、母親に伝えるために。

 コタローがいつか、墓石の文字に届くくらい背が伸びても、漢字が読めるようになっても、さまざまな事実を知ってもーーどんなときもコタローのそばには、きっと狩野がいる。狩野が強くなる意味、ここにいる意味……コタローは今、狩野の“なぜ”の答えなのだ。

 ちょっぴり情けなくて、子どもっぽくて、5歳児相手にすぐムキになる狩野だが、ときに驚くほど優しい目でコタローを見つめる。いつでもコタローのうしろを歩き、大事なときには子ども扱いせず、しゃがんで目線を合わせて話す。けれど狩野は、コタローの心のうちが分かってしまうくらい、コタローの意思を尊重できるくらい、さまざまなことを経験してきた。辛いはずの過去をいつもけろっと話す狩野の本音も、第8話では明かされた。

 横山の演技には、コミカルのなかにも優しさと強さ、切なさと寂しさが見える。横山自身が、それらをまとった存在だ。狩野進を演じるのが横山裕で本当に良かったと、回を重ねるごとに思う。

■新 亜希子
アラサー&未経験でライターに転身した元医療従事者。音楽・映画メディアを中心に、インタビュー記事・コラムを執筆。Twitter

■放送情報
『コタローは1人暮らし』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:30~0:00放送
出演:横山裕、川原瑛都、山本舞香、西畑大吾(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、百田夏菜子(ももいろクローバーZ)、生瀬勝久、光石研、峯村リエ、大倉孝二、イッセー尾形、出口夏希
原作:津村マミ『コタローは1人暮らし』(小学館)(『ビッグコミックスペリオール』で連載中)
脚本:衛藤凛
音楽:篠田大介
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:都築歩(テレビ朝日)、尾花典子(ジェイ・ストーム)、松野千鶴子(アズバーズ)、岡美鶴(アズバーズ)
監督:松本佳奈 ほか
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日、ジェイ・ストーム
(c)津村マミ/小学館(『ビッグコミックスペリオール』連載中) (c)テレビ朝日

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