松坂桃李の桃地が愛おしい 『あのときキスしておけば』タイトル回収の美しいキス
“先生”ではなく、“巴(麻生久美子)さん”が好きだと告白し、ようやく初めてのキスをしようとした桃地(松坂桃李)。だがその瞬間、オジ巴(井浦新)の魂は巴から田中マサオに戻ってしまう。
『あのときキスしておけば』(テレビ朝日系)第7話は、巴と桃地の別れが予感させられる切ない回となった。
飛行機事故に巻き込まれ、まさか自分の身体の中に数カ月もの間、他の誰かの魂が入っていたなんて露ほどにも思わないマサオは「ここは沖縄か?」「俺は死んだのか?」とパニックに。その動揺のまま、裸足で家から逃げ出してしまうマサオ。彼が自ら命を絶とうと沖縄に向かっていたことを知っている桃地は後を追いかけ、助っ人としてすべての事情を理解している高見沢(三浦翔平)と、マサオと親友だったエグゼクティブ真二(六角慎司)を呼び出す。必死の捜索の末に発見されたマサオは、またもや自殺を試みている様子。
しかし、彼の心にまだ残っている巴の魂が死を拒否したのか、マサオはふたたびオジ巴に変わる。心から安堵する桃地と高見沢だが、この日から巴とマサオの魂の入れ替わりは不安定に訪れるのだった。
次に入れ替わりが起こったのは、マサオの妻・帆奈美(MEGUMI)のフラダンス教室にて。今回の騒動をきっかけにマサオの抱えていた苦しみ、そして彼を愛しているという自分自身の気持ちに気づいた帆奈美。感動の再会を果たし、寄り添いながら自宅に帰る2人の姿を桃地は複雑な心境で見つめる。その姿がまるで捨てられた子犬のように切ない。
自分に残されている時間があとわずかだとしたら、どうするだろうか。会いたい人に会いにいく? 好きなものを好きなだけ食べる? それとも行ってみたかった場所に旅行する?きっと多くの人は仕事なんか放り出して、自由気ままに過ごすだろう。そして自分がこの世界からいなくなることを想像して、取り乱しもするだろう。
しかし、巴は最後まで“蟹釜ジョー”として、ファンのため、アンチのため、自分の作品を待ってくれているすべての人のために漫画『SEIKAの空』を猛スピードで描き上げようとする。その表情に憂いはあっても、迷いはない。それどころか、帆奈美や優太郎(窪塚愛流)のためにマサオを叱咤激励するメッセージを自らの腕に残す。強さと優しさを兼ね備えた女性、それが桃地の敬愛する巴だ。
桃地もそんな彼女の姿を目の当たりにして、田中家の幸せを願う気持ちと、永遠にマサオの姿であったとしても巴と一緒にいたいと願う気持ちの狭間で揺れ動いていた。高見沢と“入れ替わりの法則”を探る一方で、マサオはどんどん家族と絆を深め、「生きてて良かった」という気持ちを抱いていく。巴を愛する人間と、マサオを愛する人間。両者の幸せを同時に叶えることはできない。“半分こにできたらいいのに”、そう切に願う桃地と帆奈美の気持ちが痛いほど伝わってくる。