松坂桃李の桃地が愛おしい 『あのときキスしておけば』タイトル回収の美しいキス
一人で葛藤を抱える桃地の心を救ったのは、スーパーゆめはなで働く郷田(猫背椿)の言葉だった。自分より悲しい人はいっぱいいると言う桃地を、郷田は悲しさを誰かと比べるなと諭す。
桃地は優しい。誰よりも他人の気持ちがわかる“いいヤツ”だから、巴をはじめ、恋敵だった高見沢も、巴の母・妙(岸本加世子)も、嫌味ったらしいエグゼクティブ真二も、蟹釜ジョーのアンチだった水出(阿南敦子)も、みんな桃地を好きになり、強力な仲間になってくれた。だけど桃地が自分を犠牲にしてまで他人に愛情を注ぎがちなこと、そして今、「巴とずっと一緒にいたい」という一番大事な気持ちに蓋をしてしまっていることを郷田は見抜いたのだろう。
「桃地は愛されてるから大丈夫。仲間もいるから大丈夫。思ったようにやればいいよ」
背中を押された桃地は誰かのためではなく、自分のためにオジ巴の元へ走る。残された時間を『SEIKAの空』を描く時間に使いたいから別れてほしいという巴の優しい嘘にも、もう惑わされたりしない。強さと優しさ、そして親しい人にしか見せない巴の弱さを全身で受け止め、愛してると告げる桃地の前で、巴は泣きじゃくる子供のような姿に戻る。夕焼けに照らされ、初めてのキスをする2人。こんなに美しいキスシーンは見たことがない。
“あのときキスしておけば”という桃地の後悔から始まった、奇跡の時間。願わくば、どちらも不器用で優しい桃地と巴の幸せな時間がこのまま続きますように。
■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。
■放送情報
『あのときキスしておけば』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15〜放送(一部地域で放送時間が異なる)
出演:松坂桃李、麻生久美子、井浦新、三浦翔平、岸本加世子、MEGUMI、猫背椿、六角慎司、阿南敦子、うらじぬの、角田貴志、藤枝喜輝、川瀬莉子、板倉武志、窪塚愛流
脚本:大石静
演出:本橋圭太、日暮謙、YukiSaito
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、本郷達也(MMJ)
制作:テレビ朝日、MMJ
(c)テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/anokiss/