有村架純の姿が頭から離れない 『コントが始まる』『るろ剣』にみる、俳優としての到達点
『コントが始まる』(日本テレビ系)の“中浜さん”役が話題の有村架純。彼女のことを親しみを込めて、いち早く“里穂子”と下の名前で呼んだ自信のある方は筆者だけではないだろう。彼女がお笑いトリオ・マクベスを心の拠り所としているように、みなが彼女を心の拠り所としているのだ。そんな里穂子を演じる有村が、映画『るろうに剣心』の最終作『るろうに剣心 最終章 The Beginning』(以下、『The Beginning』)では儚げなヒロインに扮している。“いよいよとんでもないところにまで有村架純はきてしまった”ーーそう感じずにはいられない。観終わってからしばらくしても、彼女が演じる巴の表情や声が頭から離れないのだ。『コントが始まる』でのチャーミングな演技との差異が印象的である。
有村が演じる里穂子という人物は、行き詰まっているマクベスの熱狂的なファン。普段は穏やかな性格だが、マクベスのこととなると興奮し、つい取り乱してしまうこともあるから愛らしい。里穂子は本作においてヒロインのポジションにあるが、恋愛的なものは描かれず、あるのは彼女のマクベスに対する深い愛情ばかりである。
物語の核となっているのは、菅田将暉、仲野太賀、神木隆之介らが演じるマクベスの3人の行く末だ。これを私たちは話数を重ねるごとに知っていくわけで、里穂子はいわばナビゲーターだといえるだろう。彼女の視点を介することで、私たちはマクベスに対してより親近感をおぼえるのだ。マクベスの3人だけでもこの物語は成立するが、熱狂的なファンである里穂子がいるからこそ、そこにさらなるドラマが生まれるのである。ときにシリアスに、ときにコメディチックに、彼女がスパイスを加えているのだ。
有村はヒロインではあるものの、彼らよりも一歩後ろに下がり、視聴者にとってすでに魅力的な彼らが、私たちが思うよりも魅力的であることをその存在をもってして伝えてくれている。どこまで自己主張し、どれくらい自己を抑えるべきか。里穂子役のこのさじ加減しだいでは、ドラマの手触りはまた違うものになると思う。素朴なこのキャラクターを演じる有村に課されているものは、とても大きいのだ。