高畑充希「一人で背負わないように」 シングルマザー役で考えた“母”になること

高畑充希が考えた“母”になること

 菅野美穂、高畑充希、尾野真千子が同じ「石橋ユウ」という名前の小学5年生の息子を持つ母親を演じる映画『明日の食卓』。『糸』『8年越しの花嫁 奇跡の実話』の瀬々敬久監督がメガホンを取った本作では、些細なことがきっかけで息子の“ユウ”と母親たちの忙しく幸せな生活が徐々に崩れていく。無意識に子どもに向いてしまう苛立ちと怒り。住む場所も家庭環境も違う“3つの石橋家”の行き着く運命は。

 今回、本作で母親役を演じる3人のうち、高畑充希にインタビュー。高畑が演じるのは、シングルマザーで大阪に暮らす加奈。若くして子供を産み、日々非正規の仕事を掛け持ち、時間に追われながらも息子のために健気に生きている。加奈と息子の勇(阿久津慶人)との関係性や、母親役を演じて考えたことについて話してもらった。

大阪出身の加奈に感じた「親近感」

ーー台本を読んで役に入る前、加奈という役にどういう印象を持ちましたか?

高畑充希(以下、高畑):私も同じ大阪出身で、実際にシングルマザーののお母さんがバリバリ働いているのを幼い頃近くでみていたので、どこか懐かしい香りがする役だなと。演じていてもすごく親近感が湧きました。

ーー加奈パートは東京で撮影されたそうですが、どこか大阪っぽい雰囲気を感じました。

高畑:東京の近くの町工場が多い場所で撮影したので、大阪感のある街並みではあったかもしれません。でも、それ以外で関西っぽくしようとかはあまり考えていなくて。加奈は生活がギリギリの人だったので、そこは大切にできたらな、と。生活面や人当たりの感じなどは想像しながらやっていました。

ーー母親役を演じる上で一番意識したことはなんでしょう?

高畑:私は子どもがいないので、最初は想像することでしか演じられないなと思っていました。でも、周りの子どもがいるママを見ていても、みんなそれぞれ子どもとの距離感ってバラバラだなと気づいて。加奈はどちらかというと、優しく見守る“お母さん”というより、子どもと同じ目線に立つ瞬間が多い人なのかなという印象があったので、勇役の阿久津くんにはあまり警戒されないように、いろいろ話しかけてこっそり近づいていきました。

瀬々監督は「超シャイ」で「映画を撮るのがすごく好きな人」

ーー3人の母と子どもの関係性が描かれていきますが、その中でも一番惹かれたエピソードはどれでしょう?

高畑:菅野さんが演じる留美子パートで、離婚したときに旦那さんに「感謝している」という話をするところは好きだなと感じました。離婚する瞬間とか、父親が家を出て行く瞬間は、意外とドラマや映画であまり観たことがないなと思って。大人の勝手だけど、人間は変わっていくから、ずっと婚姻関係でいるのって難しいことだなと思いますし……すごく新鮮な感じがしました。

ーー同じ母親であるあすみ(尾野真千子)と留美子(菅野美穂)のパートを観たとき、どんな感想を持ちましたか?

高畑:加奈は、町工場の雑多な中で暮らし、お金がなく、働きづめで……という状況で、映画を観ると、ほかの2つの家族は全く別の映画のように空気が違って見えるなと。今回、現場に行ってみないと分からないことがたくさんあったので、たぶん、3つの現場はそれぞれ全く空気感が違ったんだろうなと思います。もし私が別の役だったら、また全然、その場で受ける空気感が違うんだろうなと思いました。菅野さんは本当にお子さんがいらっしゃるから、留美子の姿にはとてもリアリティがあって。私はまだ29歳で自分ではその説得力を出せないので、今回、加奈という役をいただけたこと自体がすごくおもしろかったなと思います。

ーー喫茶店で、山田真歩さんが演じる、息子の同級生の母親とのシーンは、加奈に変化が起きたようで、特に印象に残りました。

高畑:加奈は全編を通して、どんなに抑圧されてもコップの水をこぼさないようにずっと頑張ってる人だったので。最後まで全部はこぼさなかったように思うんですが、このシーンは、ちょっとそれがこぼれてしまう、漏れ出てしまうようなシーンなのかなと想像していました。あとは、本当に何もプランニングはせず、真歩さんとのやりとりの中で生まれたものを大切にやろうと思っていました。そしたら、シーンを終えた後にすごく清々しい気持ちになり、最初に思い描いていたものとはどんどん変わっていくので、不思議な気持ちでした。

ーー監督からの演出で特に印象に残っていることはありますか?

高畑:監督はほとんど演出をつけない方で、それと超シャイなんです。だから私もすごく不安で、初日は「私大丈夫ですかね?」と聞きに行ったりしていました。でも、監督はいつもくっつきそうなくらいモニターを見ていて、映画を撮るのがすごく好きな人なんだなと。瀬々組の熱量に飲み込まれていたら、撮影の1週間があっという間でした。

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