蒔田彩珠と永瀬廉の知られざる一面 心情と天候がリンクする『おかえりモネ』

心情と天候がリンクする『おかえりモネ』

 何が幸福かなんて、外から見ただけではわからない。まぶしく輝いているあの人も、ひそかに苦労や悩みを抱えている。『おかえりモネ』(NHK総合)第17話で、私たちは未知(蒔田彩珠)と亮(永瀬廉)の知られざる一面を目にすることになった。

 「みーちゃんはすごいな」。三生(前田航基)と百音(清原果耶)の会話。三生は永浦家に居候中で、すぐ前のシーンでは父親で住職の秀水(千葉哲也)とあやうく鉢合わせしそうになった。「りょーちんとかさ、漁師になるって迷いないじゃん。俺、久々にあいつら見たら『ああ、やべえ』って思っちゃった」。正直な三生。百音も同じように感じているみたいだ。が、本当にそうなのか? 未知や亮の本心を知りたくなった。

 龍己(藤竜也)は空を見上げて「明日、雨かもしれねえな」とつぶやく。テレビの天気予報で、朝岡(西島秀俊)は天気が下り坂になると告げる。龍己は未知にカキの原盤をなるべく早く引き揚げるように言うが、それが思わぬ火種となった。買い物に出た耕治(内野聖陽)は亮の姿を目にする。亮は酔った新次(浅野忠信)に肩を貸して歩く。「しばらくぶり」と新次。雨が降り出す。

 「山は海とつながってるんだ」。またもや幼い頃の記憶がフラッシュバックする。登米で見た木々は形を変えて人の役に立っている。そして風。山と海を結ぶのは水と空気だ。海に生きる人々は天気を知っている。龍己、亮、耕治、そして新次も。天気を身近に感じたことは百音にとって収穫だった。

 時々刻々移り変わる天気のように、感情のグラデーションを綴っていく『おかえりモネ』。わかりやすい起承転結がないので、戸惑う人もいるかもしれない。人間の行動に必ず理由があるという考えに慣れすぎると、つい何らかの意味を読み取ろうとしてしまうが、そういった過剰な意味付けへの欲求を、本作はやんわりと拒んでいるようにも思える。

 しかし、丁寧に見ていくと個々の言動にはちゃんと理由がある。変わらないように見える人の心も、様々な縁に触れて千変万化する。そこには変化の兆しがあり、それはふとしたきっかけで表に現れる。未知が見せた怒りの表情や亮が押し込めている迷いは、時間をかけて形成されたもの。第17話では、降り出した雨とリンクさせることで心情の変化を描いた。

 なんだかんだで三生を何日も家に泊まらせる耕治。厳しく叱っても初めての“息子”ができた嬉しさを隠せないのが微笑ましい。子ども世代がおとなしめのドラマ序盤で、奮闘する父の姿を目に焼き付けたい。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

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