『おちょやん』千代を支えた女優たちを振り返る 篠原涼子、宮澤エマらが生んだ感動

篠原涼子ら『おちょやん』を支えた女優たち

高峰ルリ子(明日海りお)

 千代が女優として切磋琢磨した良きライバルと言えるのが「鶴亀家庭劇」座員の高峰ルリ子(明日海りお)。東京新派劇の名門「花菱団」のトップ女優という肩書きで参加しただけに、最初は喜劇を見下し、かつて婚約者を奪った女優の顔が千代に似ていたことから千代を嫌う。しかし、過去のトラブルが明らかになり、女優を辞めようとしたとき、千代の必死の説得によって思いとどまり、以降は心を許す間柄となる。ルリ子はいかにもプライドの高い女優という役柄で、カメラ目線が多いことも話題となったが、明日海りお自身も元宝塚歌劇団花組トップスターなだけに、そうした喜劇役者とは違う所作であったり、プライドの高さをユーモアに変える巧みさで印象深い演技を見せた。

上田栗子(宮澤エマ)

 そして、物語の終盤で感動の嵐を巻き起こした、千代の継母である栗子(宮澤エマ)。千代が奉仕に出されるきっかけとなった一番憎むべき継母としての登場だったが、千代が一平(成田凌)の不倫で離婚し、劇団を辞め、路頭に迷っている時に再登場。千代の人生を狂わせた負い目でずっと苦しみ、それを謝罪したことで、千代と律子のこれまでの過去が清算されたようで、千代だけでなく、視聴者も救われた気分となった。また物語の謎とされてきた、千代に花を贈り続けてきた人物が栗子と分かるなど、常に千代を応援していた一番のファンだということも判明し、人生の最後に、引退を決意した千代を復帰へと導き感動を呼んだ。宮澤エマはわずか32歳にして、様々な経験を重ねた実年齢以上の貫禄ある芝居を見せ、演技力の高さを世に知らしめた。

 他にも、千代が女優を目指すきっかけとなる大女優・高城百合子(井川遥)であったり、シズが唯一心を乱すライバルであり、お互いの子が結婚することになる芝居茶屋の富川菊(いしのようこ)など、魅力的な女性キャラクターが数多く登場した『おちょやん』。どんな状況でも女優として生きてきた人、店を守る人、家族を守る人など、職業に関わらず様々な大変なことを抱えながらも、弱みを見せず凛として生きる登場人物たちの姿は、必死に日々を生きるみんながスターだということを教えてくれたようにも感じる。

 これだけ自分をを見守ってくれる存在が多い千代の人生は幸せだ。ラジオドラマで「大阪のお母さん」として人気を博す竹井千代だが、その姿はこれまで会って来た人々の積み重ねが創り上げたものだということは言うまでもない。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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