ずん 飯尾和樹、ニッチなポジションで唯一無二の個性 “気のいいおじさん”で人気沸騰!?
お仕事ドラマを盛り上げる立場として、主人公の上司や取引先の社員の存在は必要不可欠である。そして、このポジションで昨今注目を集めるのが、お笑いコンビ「ずん」の飯尾和樹だろう。もともと穏やかで優しい芸風が持ち味の飯尾は、『アンナチュラル』(TBS系)を筆頭に、様々なお仕事ドラマで活躍を見せる。特に2020年からは『私の家政夫ナギサさん』(TBS系、以下『わたナギ』)、『着飾る恋には理由があって』(TBS系)のほか、スペシャルドラマやゲスト出演を通して役者としての個性も確立してきた。
飯尾の役どころを一言で表すならば、ズバリ「気のいいおじさん」だろう。現在放送中の『着飾る恋には理由があって』では、主人公のくるみが務めるインテリア会社で、少し頼りないが優しく盛り上げ上手な上司・松下宏太郎を演じる。おっちょこちょいな一面を見せつつ、場を和ませるような冗談もポンポン飛び出す優しい先輩である。さらに『わたナギ』でも医薬品卸売会社の営業課長として、主人公のメイ(多部未華子)にマル秘情報を耳打ちし、時にはこっそりとオヤツまで渡してくれた。大変穏やかな人柄ながら、相手の名前をすぐ忘れるという可愛らしい一面も。飯尾の演じるキャラクターには、どこか憎めない欠点があり、それが場を和ませコミュニケーションを豊かにする要因にもなっているのだ。かといって自虐しすぎて自分を追い詰めるわけでもなく、まさにヒロインをサポートする「仲良しのおじさん上司」といったところ。
しかしこのポジションの役者はそうそういるわけではない。現在52歳の飯尾だが、同世代となる50代前半の役者には渡部篤郎、北村一輝、竹野内豊などの個性派が肩を並べ、よりキャラクター性の強い阿部サダヲ、佐藤二朗なども控えている。前者はいわゆる“イケおじ”枠であり、とても50代とは思えない凛々しさで作品を牽引する。後者は奇をてらった役で持ち味を発揮し、およそ「普通のおじさん」とは違ったオーラを放つのだ。そして飯尾と同じ芸人でありながら芝居もこなすのが、ネプチューンの原田泰造や、現在『おちょやん』(NHK総合)で活躍中の名倉潤である。役中では、どちらも優しい印象が強いものの、飯尾ほどの気の弱さは感じられない。