『アンナチュラル』から『MIU404』へと続く“ピタゴラ装置” ゼロ地点から未来へ向けて

『MIU404』大きなピタゴラ装置に

 ドラマ内で印象的に使われる、ピタゴラ装置。小さなビー玉がどんどん転がっていく道の途中には障害物とスイッチがあり、いくつもの分岐点を越えた先にゴールがある。

 『MIU404』(TBS系)は毎回ひとつの事件を解決していく1話完結の形をとりながら、ドラマ全体が分岐をくりかえしてつながる、大きなピタゴラ装置になっていた。

 たとえば「#1 激突」で志摩(星野源)は、伊吹(綾野剛)のパーカーにこっそりとボイスレコーダーを忍ばせる。最終話では逆に伊吹が、志摩のカバンに盗聴器を忍ばせる。どちらも「相手を信用していないから」した行為なのだけれど、そこまでの道でたくさんの分岐を繰り返した結果、同じようで違う意味の「信用しない」に変わっている。

 「#2 切なる願い」で志摩は伊吹に「相手を殺した方が負けだ」「お前は長生きしろよ」と言い、「#6 リフレイン」で伊吹は志摩に「俺の生命線は長い」と笑う。「最終話 ゼロ」ではその言葉通りにピタゴラ装置は作動し、伊吹は感情のままに久住を殺し、相棒の志摩よりも長く生きてしまうバッドエンドへと向かう。

 そんなピタゴラ装置のひとつに組み込まれていたのが、『MIU404』と同じ制作チームによる2018年のドラマ『アンナチュラル』(TBS系)。

 あの「チャリーン」という印象的なコインの音とともに、懐かしい西武蔵野署の毛利(大倉孝二)と向島(吉田ウーロン太)のコンビが登場、志摩と伊吹がUDIラボに行き、彼らの前に坂本(飯尾和樹)が現れる。ここまでは「ドラマでよくあるファンサービス」「ちょっとしたお遊び」だと思っていた。『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)で、メロンパン号が本来なら管轄外のはずの横浜にいたりするのがまさにそれ。

 しかしサプライズで電話から中堂(井浦新)のいつもの「クソが!」が聞こえ、所長(松重豊)が登場し、悲しいラストまできてやっとわかる。彼らすべてが物語のスイッチだった。

 ミコト(石原さとみ)たちが中堂を救ったから、彼はUDIラボに残り、連続殺人について執着するために指の切断面の違いについてしつこく警察に告げ、本来なら担当するべき捜査一課から口の悪さのせいで避けられ、困った所長が居合わせた志摩と伊吹に話し……。ドラマふたつを使った、壮大なピタゴラ装置。

 そして中堂とガマさん(小日向文世)は、一枚のコインの裏と表。途中までは「愛するものを殺した相手に復讐したい」という同じ道を来て、分岐で違う方へ進んだだけ。

 中堂にはずっとミコトたちUDIラボのみんながいた。ガマさんを慕う伊吹はMIU(第4機捜隊)に入ったばかりで忙しく、ガマさんとしばらく会えなかった。

 ほんのちょっとのスイッチのオンオフで、こんなに人の行く道は違ってしまう。かつての九重(岡田健史)のようにそれを「自己責任」と切り捨ててしまうか、志摩のように「人によって障害物の数が違う」と手をさしのべるのか。

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