宮澤エマは『おちょやん』に欠かせないスパイスだった 栗子の再登場は千代の未来を予言?

『おちょやん』宮澤エマは作品に欠かせない

 そして今回、栗子が再登場した際には一瞬誰か分からないほどで、低い声、背中の曲がり具合、ゆったりとした動きと口調など、これまで色んな苦労を重ねてきた事がひしひしと伝わる演技を披露。ミュージカルを中心に活躍をしている宮澤なだけに、年齢幅が広い役を観客に分かりやすく演じるというのは得意なのかもしれないが、見事な変化に本当に驚かされる。

 若い頃の無邪気な栗子と年齢を重ねた今の哀愁ある栗子は当然異なる。それは見た目だけではなく「私は悪くない」から「私が悪い」という考えの変化があり、千代に自責の念を抱きながら謝罪するシーンは、静かに語るからこその重みを感じ涙を誘った。また、2人の今の距離感が絶妙で、春子に「喧嘩するほど仲が良い」と言われるほど、表向きは言い合う仲だけど互いが良き理解者で、変に干渉せず相手の行動を見守る関係は、敵同士が戦った後に仲良くなるような友情を感じる。

 栗子が改めて登場した意味は、栗子がかつてそうだったように、最近の千代もどこか投げやりで自己中心的になっていた今、栗子と再会して自分を省みるということだろう。また、栗子が手放すことはなかった三味線という芸は、千代にとっての女優という芸事と共通し、ており、千代にとっての女優業は捨てることができないという、これからの人生を暗示していると考える。千代のモデルとされる浪花千栄子は離婚後に養女を迎え、最期まで結婚をせずに生涯を終えており、千代もこれから一生独身で女優として生涯を終えるのかもしれない。その人生の中で生きる希望であり、女優を続ける要因となるのが春子の存在。そんな生きる希望を結果的に運んだのが栗子だということ。そして、栗子が出てきたことで道頓堀の人たちを一気に過去にしてしまうインパクトもあり、新天地での物語が始まるターニングポイントとなる役割を見事に宮澤は務めたと言える。

 今後千代が劇中劇の中で母親役を演じていくが、栗子という存在もまた、千代の演技のモデルにもなるだろう。そして、これまで花を千代に送り続けて来た謎の人物がまだ究明されていないが、千代が劇団を辞めたときに道頓堀に駆けつけたのを見ると、実は女優・竹井千代の一番のファンで常に追い続けていた可能性もあるが、果たして。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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