中村倫也の表情の振れ幅に“身の毛がよだつ” 『珈琲いかがでしょう』が繋ぐ人々の思い

『珈琲いかがでしょう』中村倫也の振れ幅

「美味しい珈琲を淹れたい、ただそれだけ」

 人が珈琲で潤すのは、喉だけではないのかもしれない。遠い国からやってきた豆の旅路に、じっくりと丁寧に抽出された手間暇に、淹れてくれた人の愛情に……その一つひとつの工程に思いを馳せ、心を満たす。

 美味しい珈琲とは何か。珈琲を味わうとはどういうことか。目の前の1杯と向き合う時間を大切にすることで、より人生が香り高くなることを教えてくれるドラマ『珈琲いかがでしょう』(テレビ東京系)。第4話で淹れられたのは、ドラマオリジナルの要素が加わった「ガソリン珈琲」と、原作に忠実な「ファッション珈琲」。ドラマと原作の魅力を飲み比べるように楽しめる一夜となった。

家族の無事を祈る想いが交錯するガソリンスタンド

 パンクしてしまった青山(中村倫也)の移動販売車「たこ珈琲」。その修理に向かった先は、どうやら青山とは旧知の仲に見えるゴンザ(一ノ瀬ワタル)のガソリンスタンドだった。青山の笑顔に「身の毛がよだつ」と拒否反応を示すゴンザ。そんなやり取りの合間に、かつての金髪青山バージョンの鋭い眼差しを見せる俳優・中村倫也の表情の振れ幅に、興奮してこちらこそ「身の毛がよだつ」思いだ。

 今回、青山が珈琲を飲んでもらいたいと願ったのは、定期的にガソリンスタンドにやってくるというトラック運転手の菊川(野間口徹)だった。絶望を知った瞳の菊川だが、青山の淹れた珈琲の香りに少しだけ生き返ったような表情に変わる。聞けば、菊川は妻の病気が治るように、大好きな珈琲を飲まない願掛けをしていたという。

 運転手の菊川が事故をすることなく無事に帰ってくるようにと、毎朝妻が珈琲を淹れてくれたこと。それがとてつもなくまずかったこと。「ブルーマウンテン」を「ブルーハワイ」と言い間違えるほど、珈琲に疎い妻。それでも、その気持ちが嬉しくて毎日の楽しみになっていたこと……。現在進行系で闘病しているように聞こえた妻だが、実は1年前に亡くなっていた菊川の妻。だが、ブルーマウンテン=青山の珈琲が、菊川にとって妻の死と初めて向き合うきっかけとなる。

 一方で、ゴンザもまた家族の無事を祈るあまり、厳しい条件を飲んでいた。それは、青山を追うぺい(磯村勇斗)から愛娘を守るために、青山の車にGPSを仕掛けること。娘を守るために、青山との友情を断つことを選んだのだ。人生には自分の力ではどうすることもできない場面がある。そんなとき人は好きなものを断ち、失うことで、少しでもその流れを引き寄せたいと願うのではないだろうか。

 ドラマオリジナル部分である「妻の死をなかなか受け入れられない菊川」と、もともと原作にあった「現在進行系で家族を守ろうとするゴンザ」を対照的に描くことで、「ガソリン珈琲」のエピソードがより段階的に苦みを増していくようだった。

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