『呪術廻戦』描かれた呪術師同志の“情” 矢継ぎ早に繰り出されるコンビネーション戦の数々
花御が捉えた、術師同志の“情”
恐らく、虎杖&七海vs真人以来のコンビネーション戦がメインとなった本回。しかし、今回は「狗巻&伏黒&加茂」、「伏黒&真希」、そして「虎杖&東堂」と1話の中でこれだけもの掛け合いが魅せられた。激しい動きを複数の人物が同じ画の中で起こしているのだから、一対一に比べて作画の努力も比べ物にならないだろう。
そんな今回だからこそ、動きの中で描かれた術師同士の“情”。先ほどまで戦い合っていた者同志でも、呪霊に対して一丸となって向かい合う切り替えの速さ。そして、禪院家の繋がりを持つ同士の伏黒と真希は呪具を取り合うタイミング、息の合わせ方の自然さ。しかし、その結託感があるからこそ、どちらかが傷ついた時には隙が生じてしまう。花御はこれに驚いていた。なぜなら、彼女にとって人間はお互いを憎しみ呪い合うようなものだと認識していたから。
しかし、一見無愛想に見えたり、仲間割れに見えたりしてもそれは術師にとって立派な“情”のコミュニケーションである。伏黒は虎杖に下がるように怒鳴った。彼は少年院で一度、虎杖の言葉を信じて彼を失っている。その責任感と罪悪感を糧に、伏黒はこの交流会までに猛特訓を重ねて強くなろうとしたのだ。今回の大会の全てのモチベーションが虎杖だった、といっても過言ではない。そんな伏黒の気持ちを考えると、虎杖に怒鳴りつけてやめさせようとするぐらい、わかる。しかし、虎杖は変わっていた。それを一瞬で理解したからこそ、伏黒は精一杯の「次死んだら殺す」という言葉で後を託した。
東堂も、黒閃が打てるまでは一切関与せずに見殺しにするとまで言った。しかし、これも伏黒と同様、全て虎杖に対する信頼の証。その後、怒りに我を忘れた虎杖にビンタを喰らわせることで、彼の目を冷まさせた。これまで虎杖の構えなどのフィジカルを自身のフィジカルで教え込んできた東堂だからのやり方である。
そして黒閃を打ち損ねた時の虎杖の描写が、さすが“目”に力を入れるMAPPAならではの表現であった。彼は花御が真人の仲間だと知り、純平や他の仲間を傷つけた彼らに対する怒りが爆発してしまう。これを、凄まじく揺れる小さな瞳孔の動きひとつで表現しているのだ。表情とかではない、目で、彼の全身が煮えたぎっていることがわかる。これこそ、アニメならでは描写であり、その後決まった黒閃も普段の技とは違い「青」ではなく「赤」で表現された。しかし、それに止まらずそれから怒涛のブラザーコンビネーションバトルが繰り広げられるわけだが、一体1話の中でどれだけの神作画アクションを堪能させてもらえるのだろうか。花御と虎杖の肉弾戦における細かな3段蹴りのモーションも綺麗だったが、やはり花御の出す大木に凄まじいスピード感でついていく二人の動きは圧巻すぎて、黒閃を打つために集中していた虎杖と同じ顔をして見入ってしまった。
来週は遂に東堂の術式が明かされる。夏油の起こした百鬼夜行では、一級相手に術式を使わずに倒したという逸話を持つこの男。同じ学校の加茂でさえ、彼の術式を知らない様子だったが、我々は実は既にオープニングで“それ”を目の当たりにしている。クライマックスが近づいてきた花御との戦い、さらなるアクション描写を期待していたい。
■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。Instagram/Twitter
■放送・配信情報
『呪術廻戦』
MBS/TBS系にて、毎週金曜深夜1:25〜放送中
Amazon Prime Video、dTV、Netflix、Paravi、U-NEXTほかにて配信中
原作:『呪術廻戦』芥見下々(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:朴性厚
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:平松禎史
副監督:梅本唯
美術監督:金廷連
色彩設計:鎌田千賀子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:兼田美希、木村謙太郎
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳圭介
音楽:堤博明、照井順政、桶狭間ありさ
音響監督:藤田亜紀子
音響制作:dugout
制作:MAPPA
(c)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
公式サイト:https://jujutsukaisen.jp/#index