『呪術廻戦』、新オープニング曲から感じ取れる虎杖悠仁の心情 物語との親和性も
『呪術廻戦』が破竹の勢いだ。コミックスが品薄となり、入手困難となっている漫画はもちろん、現在放送中のアニメも、新たな話が公開される度に関連ワードがトレンド入りするほどの人気ぶり。アニメの人気と連動して、主題歌への注目も高い。第1クールのオープニングを務めたEveの「廻廻奇譚」は、Eveの公式チャンネルで公開されているMVとTOHOアニメーションのチャンネルで公開されているノンクレジットOPムービー合わせ、驚異の7000万回再生を超え、勢いを見せている。
そして、1月から放送開始した第2クールではオープニング、エンディングともに一新。新オープニングとなったWho-ya Extendedの「VIVID VICE」はオリコンデイリーデジタルシングル(単曲)ランキングで初登場1位を記録し、YouTubeのノンクレジットOPムービーも1月29日現在で900万回再生を達成している。
漫画、アニメ、音楽すべてが相乗効果を起こし、作品を盛り上げている『呪術廻戦』。本稿では、アニメの物語と新オープニング「VIVID VICE」の親和性について解き明かしたい。
『呪術廻戦』の主人公・虎杖悠仁の戦いは、彼が「正しい死」を求めたところから始まる。普通の生活を送っていた高校生の虎杖は、先輩が呪いに襲われているのを助けるため、呪いの王・両面宿儺の指を喰らい、呪いをその身に宿す。呪いによる死の存在を知り、それを「間違った死だ」と感じた虎杖は、両面宿儺を消滅させるため、そして「正しい死」を求め、東京都立呪術高等専門学校へ転入し、呪術師としての戦いに身を投じることを選ぶ。だが、そんな虎杖の前に、彼の価値観を揺るがすいくつもの「死」が現れる。
例えば、少年院に現れた強力な呪胎を祓うために派遣された虎杖たち。逃げ遅れた人を助けようとする虎杖に対し、同じ呪術師の伏黒恵は、罪を犯した受刑者を「助ける気がない」と切り捨てる。「自分が助けた人間が将来人を殺したらどうする」と伏黒に問われ、虎杖は思わず言葉に詰まる。
その後も、いじめにあっていた高校生・吉野順平が、人間の持つ負の感情をを起源とする呪霊・真人にそそのかされ、手に入れた力でいじめの主犯格を殺そうとするところに直面する虎杖。虎杖自身も戦いのさなか、真人によって形を変えられた元・人間を殺すことを迫られる。呪いから人を助けるために戦っていた虎杖は、人間自体が持つ善悪の問題を突きつけられ、「正しい死って何?」という迷いを抱えることになる。
第1クールは虎杖が本当の意味で戦う覚悟を決めるまでの物語であり、呪術師としての虎杖の真の戦いは、第2クールから始まったとも言えるかもしれない。第1クール目の最後の話にあたる13話で「正しい死にざまなんてわかりゃしない。ならせめて、わかるまであいつを殺すまで、もう俺は負けない」と決意を固めた虎杖。1月から始まった第2クールの最初にあたる14話で、伏黒に「何かあったろ」と問われた虎杖は「あった。けど大丈夫なのは本当だよ。むしろそのおかげで、誰にも負けたくねえんだわ」と強いまなざしで返している。
そんな虎杖の心情の変化を、「VIVID VICE」からは感じ取ることができる。