『おちょやん』が描く力強く生きる女性たち 朝ドラの“お約束”、山村千鳥一座の再登場を願って

『おちょやん』が描く力強く生きる女性たち

 描かれたのは、男性に頼らず力強く生きる女たちの姿ーー。

 NHK連続テレビ小説『おちょやん』。大阪・道頓堀の芝居茶屋「岡安」を出て京都に着いた千代(杉咲花)は、「カフェー・キネマ」で女給として働きながら女優を目指す。そんな千代のはじめの一歩となったのが、山村千鳥(若村麻由美)率いる一座での雑用係。第5週「女優になります」と第6週「楽しい冒険続けよう!」では、夢を持ち前を向いて生きる女性たちの姿が鮮やかに浮き上がった。

二番手としてトップを支えきった清子

 ぐっとビールを飲み干し「あいつ、ほんましょうもないで!」とまなじりを上げる清子(映美くらら)。千代が働くカフェーを訪れ、師匠・山村千鳥に対する思いを吐露する。

「すぐ怒鳴るし口悪いし我儘やしモノ投げるし性根ねじ曲がってるしババアやし」
「化粧濃いしババアやし」

 薮内清子という人物を一言で表すと“非常に有能な二番手”。座長である千鳥と他の座員たちとの橋渡しをしながら、一座全体をしっかり見渡すマネージャー的役割も担っている。「正チャンの冒険」舞台化に関しても、ただ流行っているからアレで行きましょうという思いつきではなく、世の流れを見て自ら台本を執筆し、衣装プラン図までカラーで描く念の入れよう。マーケティング+企画立ち上げ+資料作成からのプレゼン。完璧である。

 “カリスマ”的なリーダーがトップに君臨する上で必要不可欠な存在、それは“リーダーを支える有能な二番手”。一座がこれまで興行を打ってこられたのは、千鳥のカリスマ性と清子の実行力、そのふたつが合わさっていたからだ。優れた役者が優れた統率者であるとは限らない。芸のことしか考えられない千鳥を支え、誰よりも彼女を輝かせた存在が清子なのである。

 じつは清子を演じた映美くららも“トップスターを輝かせた”人物。宝塚歌劇団在籍時には入団3年目でトップ娘役に就任。紫吹淳、彩輝直(現:彩輝なお)といった2人の月組男役トップスターの相手役として舞台に立ち、男役スターの魅力を娘役として引き出してきた。

 カフェーで千代相手にさんざん千鳥の悪口を言った後で清子は表情を変え、こう語る。

「私、山村千鳥が大好きやねん」

 人間的には不完全なところも多いが、芸事への真摯な態度、そして何より行き場のなかった自分たちを役者として育ててくれた千鳥を清子は心の底から尊敬し慕っていた。だからこそ「正チャンの冒険」千穐楽後に一座の解散を決意した千鳥の想いを受け容れ、自らも新たな一歩を踏み出すことを決めたのだろう。清子の未来に幸あれ。

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