長瀬智也×宮藤官九郎が切り取った“池袋”と“2000年” 『池袋ウエストゲートパーク』が生み出した熱狂

 世の中がミレニアムに浮かれた2000年、まさに時代を映すドラマがO.A.された。現在、ParaviとTVerで配信中の『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)だ。

 池袋西口公園を舞台に、図らずもトラブルシューターとなった真島誠=マコトが「めんどくせぇ!」の口癖とともに、街で起きた事件を非正攻法で解決する本作は、多くの視聴者から熱狂的な支持を得た。

 石田衣良の同名ベストセラー小説を基に脚本を担当したのは宮藤官九郎。当時29歳だった宮藤にとって、これが初の連続ドラマ単独執筆作。カラーギャング抗争やギャルたちの刹那的な日常、集団に馴染めない未成年の姿をポップに、そして時にヘビーに描き、若手出演者の魅力を最大限に引き出している。

 中でも圧倒的な存在感を放ったのがマコト役の長瀬智也。マコトは高校時代に学校一のワルとして名を馳せ、卒業後は母親(森下愛子)が営む果実店を手伝いながら、街のトラブルを解決する一匹狼だ。大好物は焼きそばで携帯の着信音は映画『イージー・ライダー』の主題歌「Born to Be Wild」。幼なじみのタカシ(窪塚洋介)率いるカラーギャング「G-Boys」や、地元を束ねる羽沢組の組員・サル(妻夫木聡)らと交流はあるが、彼らの集団に深入りすることはない。

 それまで『白線流し』(フジテレビ系)の大河内渉役など、どこか陰のある演技で高い評価を受けてきた長瀬のターニングポイントともなったマコト役。組織に属さず自らの正義と情のみで動くアウトロー感や、全身から溢れるワイルドな空気、加えて意識しなくとも漂う何ともいえない色気はあの頃の長瀬智也にしか出せないものだと思う。

 さらに本作で鮮烈な印象を残したのがキングことタカシ役の窪塚洋介。ライオンのたてがみのような金髪と全身にまとった白服とで「G-Boys」のリーダーとして君臨する姿はまさにカリスマ。普段はどこかトボけた口調で適当にも見える行動を取りつつ、ここぞという場面で魅せるシリアスな表情は、戦いの神を表すギリシャ彫刻のようである。

 他にものちにヒットドラマで主演を担う妻夫木聡や佐藤隆太、山下智久、高橋一生、坂口憲二、阿部サダヲら、錚々たるキャストが出演していた『池袋ウエストゲートパーク』=『I.W.G.P』だが、俳優陣と同じレベルでフォーカスされていたのが「池袋」という街、そして「2000年」という時代の空気だ。

 『I.W.G.P』でチーフ演出を務めたのは堤幸彦。それまでの彼の演出作と同じく、本ドラマもほぼオールロケで撮影を行い、街と時代とが放つ混沌とした空気感をリアルに切り取っている。公衆電話ボックスで援助交際の電話をかける女子高生、駅で集めた雑誌を路上で売るホームレスや外国人露天商、単音で鳴る携帯の着信音、ダイアルアップ回線のPC、所かまわず煙草を吹かす若者たちーー。4:3の画面であらためて観る2000年の池袋からは渋谷や六本木とは違う独特な匂いが漂ってくる。

 2020年の今、池袋西口公園には野外劇場やおしゃれなカフェが建設され、不法に雑誌を売る怪しい者たちの姿は消えた。もうこの公園でカラーギャングや日焼けしたギャルの姿を見ることもない。あの頃、マコトやキングに憧れ、ウエストゲートパークで遊んでいた彼らも今やアラフォーの社会人だ。

 ストリートで使われる言葉を躍らせ、街に生きる若者たちの一瞬の輝きや刹那をリアルを映し出した本作。『池袋ウエストゲートパーク』が多くの視聴者に支持された理由のひとつが、まるで自分もマコトやキング、マサたちと池袋の街を疾走しているような感覚を覚えることだろう。小ネタや時事ネタ満載のコメディパートと、友達の死や暴力がシリアスに迫るパートとが一瞬でシンクロするスピード感に人々は熱狂したのだ。

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