TOKIO長瀬智也はなぜ“異形の主役”ばかりを演じる? 特殊な役回りを考察
フジテレビで毎週水曜日22時~OA中の医療ドラマ『フラジャイル』。同名コミックを原作にした本作の主演は、フジテレビでの主演ドラマは『ムコ殿2003』から実に約13年ぶりとなる長瀬智也だ。第3話が終了した現時点で平均視聴率は9・86%と、まずまずといえる。
長瀬が本作で演じるキャラクターは、同僚の医師に対し、「君が医者であるかぎり、僕の言葉は絶対だ」と言い放つ、天才病理医にして変人と評判の岸 京一郎。しかし、天才&変人というキャッチコピーを期待して見ると、どこか違和感が残る。そう、岸を演じる長瀬がそれほどには目立っていないのだ。なぜなら、彼を慕って病理診断科に異動してくる新米医師・宮崎を演じる武井咲の成長ストーリーにフォーカスが当てられているからだ。
ここ数年の長瀬主演の連続ドラマを振り返ってみても、彼が演じるキャラクターは常人ではないのに、なぜか悪目立ちをしていない。第一話から異質な存在感を放ってはいるが、あくまでも作品の中心軸となり周囲のレギュラーキャラクターの変化や成長、ゲスト俳優の個性を際立たせていく。言うなれば、主役でありながら裏回し。以下、最近の連ドラから過去作へと遡ってみても、共通の構造が見えてくる。
・2013年10月クール『クロコーチ』(TBS)悪徳刑事黒河内役。新人エリート刑事(剛力彩芽)の成長を促す存在。
・2013年1月クール『泣くな、はらちゃん』(日本テレビ)はらちゃん役。彼を漫画のキャラクターとして生み出した、地方に暮らすヒロイン(麻生久美子)の成長を促す存在。
・2010年7月クール『うぬぼれ刑事』(TBS)女性容疑者からいちいち惚れられていると勘違いする刑事、うぬぼれ役。女性ゲストと、うぬぼれ屋の飲み仲間“うぬぼれ5”を輝かせる。
・2009年7月クール『華麗なるスパイ』(日本テレビ)天才詐欺師・鎧井京介役。女性詐欺師ドロシー(深田恭子)を振り回し成長を促す。
(以下略)
彼が演じる役は、そもそもが異能・異質・奇人・変人であるから、感情がぐらつきはするものの、その能力や生き方は劇的には変化しない。というか、悲しいかな、変わることができない。たとえば、英国BBC制作のドラマ『SHERLOCK/シャーロック』で主人公の天才探偵シャーロック・ホームズを演じたベネディクト・カンバーバッチが、ワトソン役を演じたマーティン・フリーマンのキュートな困り顔や嗜虐的な魅力を引き出したパターンに通じる。もしくは、『マッドマックス 怒りのデスロード』で主人公のマッドマックスを演じたトム・ハーディが終始仏頂面をキープすることで、青臭い一兵士のニュークスを輝かせたパターンも思い出させる。
シャーロックよりもワトソン、マッドマックスよりもニュークスのほうが、市井の人々に近い分、共感を得やすくおいしい役といえる。はやりの言葉で言えばコスパが高い。つまり、その才能や異質さをフルに発揮するキャラクターというのは、見方を変えると実は貧乏くじなのである。