長瀬智也×宮藤官九郎が切り取った“池袋”と“2000年” 『池袋ウエストゲートパーク』が生み出した熱狂

 このドラマで初タッグを組んだ長瀬智也と宮藤官九郎は、その後も映画『真夜中の弥次さん喜多さん』(2005年)『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』(2016年)や、ドラマ『タイガー&ドラゴン』(2005年/TBS系)、『うぬぼれ刑事』(2010年/TBS系)と、さまざまな作品を世に送り出す。長瀬が演じた役柄も地獄のバンドマンから必ず犯人に恋をする刑事、落語家を目指すヤクザとブっ飛んだキャラクターばかり。

 おそらく、ともすれば画面からはみ出しそうな長瀬智也の存在感をもっとも生かせる脚本を書くのが宮藤官九郎で、宮藤のドライブ感溢れるセリフを最高の状態で体現できる俳優のひとりが長瀬智也なのだ。だからこのふたりが組んだドラマは色褪せない。初放送から20年経った今『I.W.G.P』を観返しても古臭く感じるどころか、むしろ今の時代の一歩先を行っているような感覚すら覚える。

 そのふたりが2021年1月期の『俺の家の話』(TBS系)で、ドラマでは10年ぶりとなるタッグを組む。長瀬が演じるのは人間国宝の父の介護をするため実家へ帰るプロレスラーだ。もうこの設定だけで面白い。

 池袋のストリートを疾走していたマコト……いや、全盛期を過ぎたプロレスラー・観山寿一が25年ぶりに家族と向き合う物語。あれ? 『俺の家の話』CMのバックから聞こえるのはマコトの携帯の着信音と同じ「Born to Be Wild」ではないか。これにはどんな意味があるのだろう……意味、あるよね? クドカンだもの。

 あの頃『I.W.G.P』に熱狂した私たちが、新たに始まる『俺の家の話』を観てなにを想うのか楽しみにしながら、今はミレニアムの池袋に生きるマコトとともに叫びたい。

「ブクロ、最高―!」

■上村由紀子
ドラマコラムニスト×演劇ライター。芸術系の大学を卒業後、FMラジオDJ、リポーター、TVナレーター等を経てライターに。TBS『マツコの知らない世界』(劇場の世界案内人)、『アカデミーナイトG』、テレビ東京『よじごじDays』、TBSラジオ『サキドリ!感激シアター』(舞台コメンテーター)等、メディア出演も多数。雑誌、Web媒体で俳優、クリエイターへのインタビュー取材を担当しながら、文春オンライン、産経デジタル等でエンタメ考察のコラムを連載中。ハワイ、沖縄、博多大吉が好き。Twitter:@makigami_p

■配信情報
『池袋ウエストゲートパーク』
Paravi、TVer配信中
出演:長瀬智也、加藤あい、窪塚洋介、山下智久、妻夫木聡、坂口憲二、矢沢心、佐藤隆太、酒井若菜、阿部サダヲ、前原一輝、池津祥子、高橋一生、須藤公一、小雪、きたろう、森下愛子、渡辺謙
制作著作:TBS
原作:石田衣良「池袋ウエストゲートパーク」(文藝春秋刊)
脚本:宮藤官九郎
音楽:羽毛田丈史、FOE、KREVA
主題歌:SADS「忘却の空」(東芝EMI)
プロデューサー:磯山晶
演出:堤幸彦、伊佐野英樹、金子文紀
(c)TBS (c)石田衣良/文藝春秋
配信ページ:https://www.paravi.jp/title/63632

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