『姉ちゃんの恋人』は明け方の空の太陽と月のようだった 有村架純と林遣都が送り合った光
昼と夜、地球のこちらとあちらがひとつになる奇跡
ホームセンター「T’s Craft & Home」に勤める安達桃子(有村架純)と吉岡真人(林遣都)。同じ職場ではあるけれど、桃子は日中のホームファッション売場、真人は閉店後の配送業に従事しているという点で、決して出会うことがないふたりだった。
そんな桃子と真人は、クリスマスに向けた店内装飾を考えるミーティングで初めて顔を合わせる。そこで真人は、キラキラしすぎなものよりも、誰でも「ちょっと見にいきたいな、触れたいな」と思えるような大きなもみの木のツリーがあれば……と提案し、それが桃子の考えてきた案とばっちり重なり合ってしまうのだった。
派手さより親しみやすさ。幸せな人だけではなくて……寂しい人へ。本物の、大きな、もみの木のツリー。
『姉ちゃんの恋人』(カンテレ・フジテレビ系)を全話観てから振り返ってみると、この桃子のメモ帳に書かれていた言葉が、そのままこのドラマの雰囲気を形づくっていたようにも思える。派手ではないけどしみじみと温かく、幸せに向かって歩みを進めていく登場人物たちを丁寧に追い続けるドラマ。大きなもみの木のツリーのような、どこか包容力のある優しい世界が、『泣くな、はらちゃん』(日本テレビ系)、『ひよっこ』(NHK総合)などの脚本家・岡田惠和によって演出される。
ふたりが出会う前のこと、桃子が担当している売場のスペースに、割れてしまった地球のキーホルダーが転がっていた。その地球は真人によって修理され、やがてひとつになる。昼と夜、地球のこちら側とあちら側にいた桃子と真人が出会うようにして、地球は再び形を取り戻す。それはまさしく、2020年という年にコロナウイルスでいろいろなものを失ってしまった我々への、祈りのような描写であったに違いない。