『#リモラブ』はディスタンスがおかしい人々の群像劇 水橋文美江ドラマが内包する“笑い”と“狂気”

『#リモラブ』はディスタンスがおかしい人々の群像劇 水橋文美江ドラマが内包する“笑い”と“狂気”

 2020年秋クールのドラマが一通り出揃ったが、その中で最も攻めた姿勢を見せているのは水曜夜10時に日本テレビ系で放送されている恋愛ドラマ『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』(以下、『#リモラブ』)だ。

 物語は2020年の4月からはじまる。カネバルこと鐘木パルプコーポレーションの健康管理室で働く産業医の大桜美々(波瑠)は、新型コロナウイルスが猛威を振るう中、社員のマスクや手洗いの不備を見つけては厳しく指導していた。やがて、会社もリモートワークとなり、恋人のいない美々は孤独を感じるようになる。そんな自粛生活の中、美々は同僚の精神科医・富近(江口のりこ)からストレス解消のためにオンラインゲームを勧められ、そこで「檸檬」とやりとりするようになる。相手の素性も聞かない、たわいのないやりとりの繰り返しだったが、どこの誰だかわからない相手だからこそ、美々は「檸檬」との関係に癒やされる。やがて緊急事態宣言が解除されると、美々は突然、「檸檬」に別れを告げて、気持ちを切り替えようとする。しかし、「檸檬」がカネバルの社員だと気づき、「檸檬」探しをはじめてしまう……。


 秋クールのドラマは、“コロナのある世界”を描くか、あえて無視して“コロナのない世界”を描くかという、二択が迫られているように見える。どちらを選ぶにせよ、作り手側は、自分が作っているドラマに対して自覚的にならざるを得ない。そんな中、『#リモラブ』は意識的に“コロナ禍”の現実を描こうとしている。

 それは各登場人物が、自宅以外では“ちゃんとマスクを付けている”という描写に強く現れている。コロナ禍を描いていても、演技に支障をきたすためか俳優が「マスクはつけない」という作品がほとんどの中、この『#リモラブ』だけは“マスクのある日常”をはっきりと選択している。「コロナ禍」に対して、もっとも攻めたアプローチを選択したドラマとして、記憶に残っていくことだろう。

 マスクをつけた者同士のキスや、デートで行こうとしたレストランが(コロナの影響で)潰れていたという会話のやりとりなども、コロナ禍ならではのものだろう。こういった現代ならではの描写を恋愛ドラマの中に挟み込んでいく姿勢には頭が下がる。

 脚本を担当するのは、90年代から活躍するベテラン脚本家・水橋文美江。『ホタルノヒカリ』(日本テレビ系)や『みかづき』(NHK総合)などで水橋が描くヒロインは、仕事は優秀だが、他人との距離感がおかしい変人が多い。

 その集大成と言えるのが、連続テレビ小説『スカーレット』(NHK総合)に登場した女性陶芸家の喜美子(戸田恵梨香)だろう。喜美子は陶芸家としての理想を追求するために維持費が高い穴窯を作り、焼締の陶器を作ろうとする。その過程で莫大な損失を背負うこととなるのだが、それでも焼締を辞めない。その姿は芸術家の狂気そのもので、夫の八郎(松下洸平)はついていけずに家を出て行ってしまう。コミカルな会話劇の中に明るい狂気としか言えない描写が挟み込まれるのが『スカーレット』の凄みだった。

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