『#リモラブ』はディスタンスがおかしい人々の群像劇 水橋文美江ドラマが内包する“笑い”と“狂気”

『#リモラブ』はディスタンスがおかしい人々の群像劇 水橋文美江ドラマが内包する“笑い”と“狂気”

 『#リモラブ』の美々も、医師としては優秀だが性格の悪い変人で、社内では「独裁者」と呼ばれている。医師としての厳しさは職業倫理の現れとして納得できるのだが、ふだんの性格も決して良いとは言えず、SNSとはいえ、突然「檸檬」に別れを切り出す場面を観ると「人として最悪だな」と思ってしまう。

 これは他の登場人物にも言えることで、出てくる人々は、みんなどこかおかしい。たとえば、女性社員の我孫子沙織(川栄李奈)は付き合っている男性社員の青林風一(松下洸平)にセフレ(セックスフレンド)がいると知られても動じず、今後も恋人として付き合っていこうとしていた。青林は「檸檬」として「草モチ」(美々)と5カ月ほどSNSでやりとりを続けていたのだが、そのことを沙織は「普通は知らない人と知らないままに仲良くなったりしないんだからね」と言っていた。

 自分のことを普通だと思っている沙織の姿は、コメディとしてはギリギリの線で、怖いとすら感じる。この笑えるか笑えないかのギリギリのゾーンに笑顔で剛速球を投げてくるのも水橋作品の大きな特徴だろう。特に近作はその切れ味が鋭くなっており、どう受け止めていいのかわからない場面も多い。

 おそらく『#リモラブ』は、他人との距離感(ディスタンス)がおかしい人々の群像劇を展開すると同時に、“顔の見えない相手”との恋愛に美々先生が翻弄される様子を、新型コロナウイルスに世界中が翻弄されている状況と重ねて描いているのだろう。

 「コロナ禍」の恋愛を描くことだけに焦点を絞るのであれば、登場人物は平凡な性格にして「コロナ禍」を経て、何がどう変化したのか?を見せた方がドラマとしての収まりはよかったのだろう。しかし、こういう変人たちを書かないと水橋ドラマにはならない。笑いと狂気の間を突き進むクセの強い人物描写に、作家としての業の深さを感じる。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
『#リモラブ 〜普通の恋は邪道〜』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜23:00放送
出演:波瑠、松下洸平、間宮祥太朗、川栄李奈、高橋優斗(HiHi Jets/ジャニーズJr.)、福地桃子、渡辺大、江口のりこ、及川光博
脚本:水橋文美江
演出:中島悟、丸谷俊平
プロデューサー:櫨山裕子、秋元孝之
チーフプロデューサー:西憲彦
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/remolove/
公式Twitter:@remolove_NTV
公式Instagram:@remolove_NTV

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる