二宮和也の芝居に心打たれる 身体の細部で放つ『浅田家!』のメッセージ

 二宮の芝居には、表情だけでなく、背中、指先、身体のパーツの端々にまで政志の心が宿っているようだった。たとえ表情の見えない海岸での後ろ姿でも、兄からプレゼントされたアルバムの文字を拾い上げる指先だけの寄りのショットでも、政志がどんな顔でどんな気持ちを抱えているのかが如実に伝わってくる。

 こうした身体の細部にまで心の宿る芝居は、“共鳴力”のなせる技だろう。政志という人間に強く共感し、共鳴し合うことで、それが観客に広がっていく。言葉以上に多くを物語る二宮の芝居によって、『浅田家!』に込められたメッセージはより強く放たれた。

 幸せで楽しいことばかりではなく、時にシビアな現実も描かれる。かといって、とんでもない結末に驚かされるわけではない。『浅田家!』はそんな作品だが、それは、“家族”が持つ不思議な力とよく似ている。笑い声が響く日もあれば、重い空気が立ち込めることもある“家族”というものとよく似たこの物語を、二宮は生き生きと演じきった。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■公開情報
『浅田家!』
全国東宝系にて公開中
出演:二宮和也、黒木華、菅田将暉、風吹ジュン、平田満、渡辺真起子、北村有起哉、野波麻帆、妻夫木聡
監督・脚本:中野量太
脚本:菅野友恵
原案:浅田政志『浅田家』『アルバムのチカラ』(赤々舎刊)
配給:東宝
(c) 2020「浅田家!」製作委員会
公式サイト:https://asadake.jp/

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