二宮和也の右腕“ねこちゃん”役で話題 女優・趣里、『ブラックペアン』で放つミステリアスな魅力
日曜劇場『ブラックペアン』(TBS系)で、嵐・二宮和也演じる悪魔の天才医師の良き右腕の看護師役として、異彩の存在感を放ち話題となっているのが女優の趣里。父に水谷豊、母に伊藤蘭を持ち、数々の役柄を演じてきた彼女は、今や若き個性派役者として唯一無二の存在になりつつある。
趣里が演じる主任看護師“ねこちゃん”こと猫田麻里は、手術成功率100%の腕を持つが傲慢な言動から“オペ室の悪魔”と呼ばれる天才外科医・渡海征司郎(二宮和也)を熟知し、彼とコミュニケーションが取れる数少ない人物。猫田も物怖じしない同じ思考のクールさを持ち、手術室では的確にサポートし、器械出しでも阿吽の呼吸を見せている。また、猫田自身も天才的で、渡海の出番がありそうな失敗が見込まれる手術のときはいつも待機しており、相棒の意識が強い。
いつも昼寝場所を探し回っている彼女は、仮眠室で渡海と一緒に昼寝をすることも。さらに、他人には心を開かない渡海が彼女だけは「ねこちゃん」と呼び、猫田もそれをクールに対応するなど、どこか同じ温度で信頼し合う相性の良い2人のやりとりが初回の放送から話題になっていた。
第4話では、手術に関わることを禁じられた渡海は、仮眠室からも追い出されることに。研修医の世良雅志(竹内涼真)に身の回りの物を運ばれるシーンがあったが、猫田は世良が持つ渡海のダンボールに私物を乗せ、「ついでに私の荷物もよろしくー」と渡海と行動をともにしようとする素ぶりを見せた。まさにとっつき難い“猫”のような存在だが、彼女が登場するだけでドラマに緊張感とワクワクさせる雰囲気を生み、その独特な魅力に惹かれる人が続出している。
趣里は、幼い頃からバレエを習い、プロバレリーナを目指していたが、けがにより断念。両親と同じ俳優への道へと進んだ。女優デビューは、2011年の『3年B組金八先生ファイナル~「最後の贈る言葉」4時間SP』(TBS系)。金八先生がラストを迎えるという、32年の歴史が詰まった国民的イベントと言えるスペシャルドラマで、趣里は金八先生を愛する個性的なキャラ柴崎茜役を務め、歴代の生徒たちが出演する同窓会メインの短い出番の中でも、ある意味妖精のようなピュアな演技でインパクトを残す。
俳優の故・塩屋俊さんが主宰を務める俳優養成所「アクターズクリニック」で演技を学んだ彼女は、数々のドラマや映画、特に舞台を数多く経験。世間で注目されたのが、2017年のドラマ『リバース』(TBS系)で三浦貴大演じる議員秘書・村井隆明の妻・香織役。家事は全くせず、家はゴミ屋敷という、甘やかされた育った元大臣のお嬢様だからこそ、夫の浮気という裏切り行為に嫉妬し発狂するという、プライドが高いお嬢様の演技が怖すぎると話題となる。
単純に舞台仕込みの過激な演技が得意というのとは違い、一見童顔で可愛らしいが、どこか古風でミステリアスな風貌で、江戸川乱歩や天井桟敷の舞台に出ていてもおかしくないような、若くしてレトロな雰囲気をも感じさせるのがの特徴だと考える。そう思わせたのが、2015年の『東京ウエストサイド物語』(NHK BSプレミアム)。芸者役が実に似合っていて、メイクをとった日常の姿もいなせな姐さんを演じていた。また、2017年『山本周五郎時代劇 武士の魂/第二話 晩秋』(BSジャパン)では親の敵に仕えることになる娘役を務めたが、若手女優の中で、これだけ凛とした所作で品の良さがあり、時代劇に丁度良い雰囲気を醸し出せるのはとても珍しい。
また、小田急電鉄のCMでは、制服を着た学生時代と大人になった今を重ね合わせていき、最後に制服姿で空を見上げるワンカットだけで、かけがえのない日々を一気に思わせる。表情だけで全てを語り、年齢を超越した役柄を自然と演じるというのも、趣里が持つ雰囲気があるからこそ。以前TVLIFEのインタビューで「作品がキャンバス、監督が筆だとしたら、私はずっと絵の具でありたいなと」と答えていたが、個性的な風貌にも関わらずどんな役柄でも熟してしまうのは、そういった気持ちがあるからだろう。