『Free!』劇場版、『小林さんちのメイドラゴンS』と相次ぐ新作発表 京都アニメーション、再始動へ
『小林さんちのメイドラゴン』で今ひとたび日常ものを
2010年代の京都アニメーションは、KAエスマ文庫発の自社オリジナル企画と、『響け!ユーフォニアム』など他社の原作のアニメ化をバランスよく作り続けてきた。今回第2期の製作が発表された『小林さんちのメイドラゴン』は、双葉社の『月刊アクション』で連載中のクール教信者による同名漫画を原作としている作品だ。
本作の第1期は2017年に放送され、2019年2月には第2期の製作がすでに発表されていた。発表が2019年7月前であったため、企画がどうなるのか危ぶまれていたが、この度正式に2021年の放送が発表され、ファンは安堵したことだろう。
本作は、システムエンジニアとして働く独身女性、小林さんの元に、異世界からドラゴンが人間体のメイドとして現れ、助けてもらったお礼のために住み込むことから始まるファンタジー日常系コメディだ。
ドラゴンがメイドをやるというユニークな発想で、ドラゴンと人間の奇妙な共同生活の中で起きる様々な騒動をコミカルなタッチで描く作品で、京都アニメーションの細やかな生活描写が光る作品。
本作は、基本的にはいわゆる日常ものだが、異世界で人間たちとも殺しあっていたドラゴンの血なまぐさい一面が顔をのぞかせる瞬間があり、平和な日常が薄皮一枚で壊れてしまいそうな緊張感を感じさせる場面があるのが特徴的だ。
かけがえのない日常がいかに大切なものかを思わずにはいられない作品で、平和は決して当たり前のものではないことを描いた作品と言える。
失った日常は決して戻ってこない。しかし、再び力強く新しい日常を生きることはできる。今、京都アニメーションが日常系アニメを作るということに、筆者はそういう強い意志を感じる。
こうして、新作の発表がなされたことで、2019年7月以前にアニメ化が発表されていた『響け!ユーフォニアム』久美子3年生編や、KAエスマ文庫の『二十世紀電氣目録』アニメ化の企画も再び動き出すかもしれない。
この2本の新作発表は、「ただの新作発表」以上の意味があると先に書いた。それは、京都アニメーションが、再び力強く、素晴らしいアニメーションを作り続ける日常を生きていることが確認できたからだ。9月18日から公開の始まる『劇場版 ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』ともども、来年の新作を楽しみに待ちたい。
■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。
■公開情報
『Free!』完全新作劇場版
2021年公開
(c)京都アニメーション