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“世界を肯定する力”をくれる京都アニメーション その卓越した技術が伝えてきたもの

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 筆者は、2004年末から2010年末までアメリカのロサンゼルスに留学していた。京都アニメーションの作品に出会ったのは、2009年だった。

 筆者は、いわゆる「エヴァ世代」で、90年代の第3次アニメブームをリアルに体験した世代だ。高校時代は昼間からレイトショーにかけてミニシアターで映画を観て、夜中に深夜アニメを観る生活をしていた。だが、映画学校に入学、その後、アメリカ留学時には、アニメから離れてしまった。

 そんな筆者に、再び日本のアニメの素晴らしさを教えてくれたのは、京都アニメーションが製作した『けいおん!』だった。夏季休暇等の一時帰国中に出会ったのだと記憶しているが、そのハイレベルな映画的センスに脱帽した。キャラクターの芝居の見事さ、小津安二郎を思わせるローポジションと切り返し、背景の写実的美しさなど驚くほどに緻密に作られていた。キャラクターデザインも目を見張った。ああいうリアルなO脚をアニメで観たのは初めてだった気がする。何気ない日常を切り取って、輝かしく描くその筆致はまるでエリック・ロメールのようだと思った。

 その後、過去の京都アニメーションの作品もほとんど観た。最も驚いたのは『涼宮ハルヒの憂鬱』だ。エンドレス8のようなラディカルなことを実行できるこのスタジオは普通ではないと思った。同じ物語でも、演出(=語り口)によって幾重にも姿を変えられるというのは、一の事実を複数の視点で見つめるリテラシーでもあり、映像という見つめるメディアの本質でもある。商業アニメでそんな本質を問いかけようとするなんてものすごいことだ。しかし、『ハルヒ』は、奇をてらうことを目的にしておらず、そのような奇抜な方法でないと
語れない物語であり、全編に渡るラディカルさは必然的な要請であった。

『リズと青い鳥』(c)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

 2011年に帰国後、以降の京都アニメーションの作品は欠かさず観続けた。『たまこラブストーリー』や『聲の形』『リズと青い鳥』と傑作映画を連発した山田尚子監督の作品はもちろん、その他の作品も総じて非常に質が高い。『Free!』シリーズの肉体の躍動感は、映像が本来持つ感動を存分に味わわせてくれる。「動く」ということは、映像の感動と興奮の根源にあるものだが、その根源的魅力をどこまでも忠実に追求した作品だと思う。

 アニメーションとは、生命なきものに生命を宿す芸術の形であるが、京都アニメーションの持つその技法は日本でトップクラスだ。『リズと青い鳥』には、わずかに動く唇のふるえ、瞬きの速度、後ずさりする距離や速度の僅かな違い、揺れるポニーテールにも感情が宿り、静謐な印象と裏腹に豊かな情感と生命感に溢れた傑作だった。

『リズと青い鳥』(c)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

 筆者は山田監督にインタビューしたことがあるが、京都アニメーションの作る絵の芝居についてこのように答えてくれた。「今回は『今楽しいよと言っていても本当に心から楽しいって言ってるのかどうか?』、という作品なので、作品世界の純度を上げるために「微笑みのような何か」を定着できるような手法を探りました。京都アニメーションのスタッフはそういう機微に関してとても理解がありますし、ずっとそういうのを積み上げてきたスタッフですから」(参考:一挙手一投足から感情が溢れ出す映画『リズと青い鳥』山田尚子監督インタビュー)。

 そうした機微を表現するのは、生身の役者でも簡単なことではない。京都アニメーションとは、それだけの卓抜とした技術を研鑽してきた集団なのだ。

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