リブート版成功の理由は? 『マクガイバー』が引き継いだ普遍性とDIY精神

普遍性とDIY精神継承した『マクガイバー』

 銃がなくても、世界は救える! 敢えて銃を携行せず、その豊富な科学知識と天才的な発想力によって絶体絶命の危機を切り抜ける、異色のスーパーエージェント=マクガイバーが帰ってきた!

 映画『X-MEN』シリーズで、赤い光線を身体から発する“ハボック/アレックス・サマーズ”を演じた金髪碧眼の優男=ルーカス・ティルを主演に擁し、その記念すべき第1話の監督を映画『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2015年)で一躍アクション映画の寵児となったジェームズ・ワンが務めるなど(現在は、エグゼクティブプロデューサーのひとりとして名を連ねている)、2016年の放送開始以来、高い人気を誇っているアメリカのアクションドラマ『MACGYVER/マクガイバー』。そのシーズン3のDVDが、このたび日本でもリリースされた(吹替版では引き続きマクガイバーの声を人気声優・宮野真守が担当している)。

 ところで、「マクガイバー」と発したとき、思わず「冒険野郎?」と返す人がいたならば、その人は80年代をテレビの前で過ごした元・少年少女たちである可能性が高いだろう。そう、80年代は海外ドラマの“黎明期”とも言える、百花繚乱の時代だった。アメリカの大手ネットワーク局では、『ナイトライダー』(1982~1986年)、『特攻野郎Aチーム』(1983~1987年)、『特捜刑事マイアミ・バイス』(1984~1989年)、『俺がハマーだ!』(1986~1988年)など、1話完結型のアクションドラマが続々と制作され、毎週放送されていたのだ。そして、それらのドラマはいずれも日本の地上波で放送され(もちろん、吹替版だ)、その日本ではあり得ない派手なアクションによって、当時の少年少女たちの心を激しく魅了していたのだ。そんな状況にあって、本国アメリカでは1985年から1992年まで7シーズン全139話が放送され、日本では1988年にゴールデンタイムの“洋画劇場枠”で2話ずつ連続放送されたのち、深夜枠でレギュラー放送されるなど根強い人気を誇っていた『冒険野郎マクガイバー』。そう、ここで紹介する『MACGYVER/マクガイバー』とは、そんな80年代の人気ドラマのひとつであった『冒険野郎マクガイバー』のリブート作なのだ。

 のちにリブート版の映画が作られることになるドラマ『スパイ大作戦』(1966~1973年)や『チャーリーズ・エンジェル』(1976~1981年)などと同じく、国家とは直接関係のない組織(フェニックス財団)のエリート諜報員であるマクガイバーが世界を股にかけて活躍し、さまざまな悪と戦っていくという『冒険野郎マクガイバー』の物語。しかし、“スパイアクション”というジャンルの中にあって本作がとりわけ異質だったのは、その主人公であるマクガイバーが、格闘術や銃器を扱うことに長けているのではなく、むしろ銃器の使用を嫌い(そう、彼は非暴力主義者なのだ)、その豊富な科学知識とサバイバル術によって、さまざまなピンチを切り抜けていくところにあった。当時は珍しかったビクトリノックスのナイフ(いわゆる“十徳ナイフ”だ)を器用に用いながら、クリップや洗剤など身の回りにあるもので、護身用の武器や爆発物、あるいは脱出のための道具を作り出していくマクガイバー。豊富な科学知識とサバイバル術に裏付けされた、その驚くべき発想力と鮮やかな手さばきに、多くの視聴者は魅了されたのだ(ビクトリノックスのナイフも当時ブームになった)。

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