『3年A組』柊を演じた菅田将暉が『MIU404』久住を演じる意義 “正義の味方”はどこにいる?

『3年A組』柊を演じた菅田将暉が『MIU404』久住を演じる意義 “正義の味方”はどこにいる?

「つぶやきは、感情を食べて、化け物になる」

 とは、野木亜紀子脚本のNHKドラマ『フェイクニュース』(2018年)のキービジュアルのキャッチコピーである。フェイクニュースに外国人労働者問題、SNS問題と『MIU404』が扱った問題と重なる題材を描いた、北川景子主演のドラマだ。終盤、ヒロインは、SNSが巻き起こした彼女自身さえも何が真実なのかもわからない、得体の知れない混沌の只中に立ち尽くす。野木は、「SNSで日夜起こる差別や叩き合いによる分断、「感情」というバイアスで真偽を見失う怖さを描いた作品」と語っている(「のぎといういきもの≒野木亜紀子」フェイクニュース倉庫)。

 『MIU404』第10話の終盤もまた、そうだった。「tbutter」のつぶやきは、人々の感情を巧みに操り支配しようとする久住(菅田将暉)の意志によって化け物となり、「存在しない事件」を巻き起こす。「正義の味方」を乗せた心優しいメロンパン号は、爆破テロの実行犯を乗せた悪の車にあっという間に転じてしまう。

 そして、「僕は死にましぇん」と叫ぶ武田鉄矢のように、トラックの前に立ちはだかったら死なないのがテレビドラマのお約束ではなかったのか。心優しき熱血刑事・陣馬(橋本じゅん)は、自らが振りかざした警察という「正義」を前にしても、一向に止まろうとしないトラックに驚いた表情を浮かべたままフレームアウトする。

 物語の中で表示されている「tbutter」のトレンドは「#MIU404」であり、それは間違いなく同じフレーズが表示されているだろう、我々が観ているドラマ放送後のTwitterのトレンド欄と繋がる。ドラマと現実は確かに地続きで、この物語は決して夢物語ではない。そしてそのことは、かつて菅田将暉が演じた『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系/2019年)の柊一颯がテレビのこちら側にいる私たち視聴者に向かって必死に訴えていたように、「考えろ」「想像しろ」と投げかけるのである。

 ハムちゃんこと羽野麦(黒川智花)の救出劇、そして九重(岡田健史)にとっての、彼が一度は救えなかった少年・成川岳(鈴鹿央士)の救出劇でもあった第9話はまるで、それまで執拗に記号として登場していたピタゴラ装置が、見えないところで物語の中枢を担っているかのような回だった。

 「間に合う、間に合う、間に合う」という志摩(星野源)と伊吹(綾野剛)の祈りのような連呼に皮肉にも呼応するように、善意に見せかけた悪意のつぶやきが特派員REC(渡邊圭祐)によって拡散されていく。麦に接近した成川とすれ違う伊吹、心配で麦のスマホを覗こうとしたけれども自制した桔梗(麻生久美子)。そして麦が相談したい時に傍にいることができなかった桔梗。最悪の方向に転がり出した羽野麦の運命は、それぞれのやむを得ない事情によってスイッチを見逃され続け、正しい道筋を外れ、どんどん加速し、深い井戸の底に「沈められて」しまう。そして、最後の最後になんとか「いい方にスイッチさせる」ことができた志摩と伊吹が彼女を救い出す。九重における成川もまた、同様のことが言える。

  “メフィストフェレス”久住は、思うままに人々を操り、支配する。その手から巧みに逃れた、第10話の副題「Not found」を象徴する一匹の黄色い蝶は、実体の掴めない男・久住自身を示したものか、第1話で「404エラー(not found)」とされた臨時部隊、第4機捜隊を示したものなのか。それとも、終盤に起こる「存在しないテロ」それ自体を示したものか。

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