『MIU404』菅田将暉演じる久住は“神”になりたいのか 気になる最終回の展開は?

『MIU404』菅田将暉演じる久住は“神”になりたいのか 気になる最終回の展開は?

 圧巻のラスト10分間。『MIU404』(TBS系)の第10話では、同時多発テロが起こったというデマが広がり、悪と戦っている主人公たちが逆にテロリストに仕立て上げられるという衝撃の結末で幕を閉じた。警察の機動捜査隊404号のコンビ、伊吹(綾野剛)と志摩(星野源)は、同僚たちを攻撃したと見られる謎の男・久住(菅田将暉)を追い、ネットで動画配信をしているREC(渡邊圭祐)を介して久住とオンラインミーティングで会話(2019年の物語なので彼らは時代を先取りしていたことに)。そこで2人は久住の居場所を突き止め、急行したが、久住の仕掛けた都内12カ所での爆破テロのフェイクニュースが日本中を席巻。伊吹と志摩は病院が爆破されたという誤報を受け、そちらの救出を優先したために、まんまと久住に逃げられてしまった。顔バレもせずに、たったひとりでサイバーテロも仕掛けられる久住は強い、強すぎる。最後に「(久住の外見は)分かんねぇよ、クソッ!」と叫んだ伊吹の悔しさがよく伝わってきた。

 これまでは捜査劇として個別に起こった殺人事件や、伊吹や志摩のストーリーを描いてきたこのドラマ。最終回前まで来て、スケールがぐんと広がった。これは脚本の野木亜紀子をはじめ、同じプロデューサー、監督のチームで作ったオリジナルの前作『アンナチュラル』(TBS系)でもなかったことである。『アンナチュラル』では強い殺意を持った連続殺人犯や彼を利用した雑誌記者は登場したが、久住のようにネット社会を操り、自分から警察を挑発し攻撃するような革命家気質の犯人は出てこなかった。どうやら久住が望んでいるのは、ネットとデジタルツールが高度に発達した現在の世界でそれを逆手に取り、「人間ではない」神のような存在になることらしい。もはや彼は単なる犯罪者でなく、AIが人間の能力を超えコントロール不能になるという“シンギュラリティ”という脅威の暗喩ですらあるのかもしれない。

 フェイクニュースは、脚本の野木亜紀子が2018年の『フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話』(NHK)でも描いた現代ならではのモチーフであり、拡散される情報の危うさと、現実と虚構を見分ける難しさを感じさせる。また、久住役の菅田将暉のドラマにおけるキャリアを見ると、1年前の『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)では教師を演じ、「フェイクニュースやバッシングが人の命を奪ってしまうんだ」と全身全霊をかけて訴えかけていたのに、今回はフェイクニュースを仕掛ける側というのが面白い。余談だが、もし出演順が逆で『MIU404』が先だったら、『3年A組』最終回の感動のスピーチが「(フェイクニュースを流した)お前が言うな」案件になってしまったので、これでよかったのだ。

 一方、『アンナチュラル』から変わらないテーマもある。志摩が久住を「メフィストフェレス」とファウストが召喚した悪魔の名前で呼んだように、『アンナチュラル』に出てきた連続殺人犯のように、ためらいなく明確な意志を持って罪を犯す相手に、どうやって対抗すればいいのだろうか。久住の圧倒的なパワーを目の当たりにして、「手段を選ばない相手とどう戦えばいいんだろう?」という機動捜査隊隊長・桔梗(麻生久美子)の言葉と「正義ってすんげえ弱えのかもしんねえな」という伊吹のぼやきがリフレインする。

 “モラルなき悪”と対峙するとき、刑事は道を踏み外す。警察官として法律を守らなければいけないがゆえに、圧倒的な不利な立場になり追い詰められて。それは志摩の元相棒・香坂(村上虹郎)もそうだったし、妻を殺された伊吹の恩師・蒲郡(小日向文世)もそうだった。他の刑事ドラマでも『BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係』(テレビ朝日系)で殺人犯(『私の家政夫ナギサさん』の大森南朋)を許せずビルから突き落としてしまった石川刑事(小栗旬)を筆頭に、その超えてはいけない境界線を超えてしまったキャラクターはたくさんいる。

 もしかすると、伊吹と志摩もそのラインを超えてしまうのか? 第10話で、逮捕か救出かでの分岐点に立ったときに、伊吹の「生きていれば何回でも勝つチャンスはある!」という言葉に、志摩が「了解、相棒」と答えたのは、最大の萌えポイントで、もはや伊吹と志摩の信頼関係は揺るぎないものに見えたが、最終話のあらすじによると「伊吹は志摩の態度がおかしいことを追及。結果的に2人の関係がギクシャクしてしまう」そうだ。おかしくなって暴走しまうのは志摩なのか? 第10話、桔梗の自宅で酒を飲みながら「俺たち警察は、弱い者を守りながら、どこまでも正しく、清廉潔白でいなくちゃならない」と言った志摩の表情には伊吹に対してそう言うときのような強さがなく、少し気持ちが揺らいでいるように見えた。

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