綾野剛×星野源『MIU404』が“初動”を描くワケ 野木亜紀子脚本作にみる“分岐点”のあり方

綾野剛×星野源『MIU404』が“初動”を描くワケ 野木亜紀子脚本作にみる“分岐点”のあり方

 思えば、野木亜紀子はこれまでもオリジナル脚本の中で、様々なかたちで「分岐点」を描いてきた。

 『アンナチュラル』が先述のように「結果」から遡り、分岐点を見つめる物語であるとすれば、『獣になれない私たち』(日本テレビ系)は全方位に気を遣い、神経をすり減らすヒロイン・晶(新垣結衣)が、長く長く続くトンネルの中で、出口である分岐点を求めて、もげき、あがく物語だった。

 また、『コタキ兄弟と四苦八苦』(テレビ東京系)では、ふとしたきっかけから「レンタルおやじ」を営む兄弟・一路&二路(古舘寛治、滝藤賢一)が出会う人々の人生の分岐点が描かれてきた。しかし、終盤では二人の過去と、二人が通う「喫茶 シャバダバ」のアルバイト店員さっちゃん(芳根京子)の過去が交錯する。

『コタキ兄弟と四苦八苦』(c)テレビ東京

 Y字路で、3人の体が入れ替わるというSF的ぶっとび展開が描かれる中、実はY字路の左手には「シャバダバ」が、また、さっちゃんが幼少時に父親から「行ってはいけない」と言われてきた右手には小滝家があったことがわかってくる。

 父が次に行くのはローマだと聞き、一度「ローマを探しに」Y字路の右手に行って迷子になり、泣いていた幼い日のさっちゃん。そのさっちゃんに声をかけてくれたのがコタキ兄弟だったこと。そして、Y字路をはさんで互いの存在を知らずに育った3人が、実は浮気性の父を持つ異母きょうだいだったこと、その事実をさっちゃんに伝えるかどうか兄弟は悩むという展開が描かれた。

 まさかレンタルおやじが入り浸る「喫茶 シャバダバ」と小滝家、そして「シャバダバ」の店員・さっちゃんと兄弟がY字路で隔てられながらも、つながっていたとは。壮大な伏線が回収される「分岐点」のあり方だった。

 そうした流れを経て描かれる『MIU404』では、「初動」という分岐点の手前の物語が描かれている。救えなかった命があり、シビアな現実があり、後悔はつきまとうが、その一方で、「成川を救えなかった」罪の意識を持ち続けた九重は、第9話で成川の「助けて」に応じて救い出す。

 裏カジノ事件の情報提供者であり、報復を企むエトリ(水橋研二)に狙われていた羽野麦(黒川智花、以下ハムちゃん)を桔梗がかくまっていたが、そんなハムちゃんを成川が誘い出したことで、エトリにとらえられてしまう。しかし、自分が「分岐点」で誤った選択をしたことに気づいた成川は、ハムちゃんを救おうと必死で助けを求めたことが、ハムちゃんを救い、自分を救うことにつながった。

 人生では様々な分岐点があり、残念ながら、分岐点の前では、その選択のどちらが正しいかはわからない。だからこそ、振り返ってみて「あのとき、もし、〇〇だったら」と後悔することは非常に多い。

 しかし、「初動」を描く、分岐点の手前の物語『MIU404』では、そんな分岐点が人生の中では幾度となく繰り返されることを示している。そして、一度分岐点で選択を誤っても、それが致命的な重大ミスであったとしてすらも、生きている限りは、次の分岐点でやり直すことができる可能性も示唆している。

 加えて、分岐点の前ではどちらの道が正しいかわからないが、分岐点にぶつかったときに「信じられる人がいること」「自分から助けてと言えること」がいかに大切であるかも、考えさせられる。

 数々の「分岐点」を描いてきた野木亜紀子作品の中でも、やり直しが何度もできることを示唆している『MIU404』は、実は今の暗い世の中を照らす、これまでで一番優しく希望に満ちた物語なのではないだろうか。

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

■放送情報
金曜ドラマ『MIU404』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:綾野剛、星野源、岡田健史、橋本じゅん、黒川智花、渡邊圭祐、金井勇太、生瀬勝久、麻生久美子、黒川智花
脚本:野木亜紀子
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、加藤尚樹
プロデュース:新井順子
音楽:得田真裕
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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