『SAO』が描く“人間とAIの関係性” アリシゼーション編は作品テーマを深化させたものに
7月より放送中の『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』(以下、『SAO』)の2ndクールは現在佳境を迎えている。長らく待ちわびていたキリトが復活を遂げ、人界軍とダークテリトリー軍の壮絶な戦いもいよいよ大詰めだ。
現在放送されているアリシゼーション編は、アリスと称される「AI」を巡って、様々な思惑が入り乱れながら物語が進んでいる。そのなかで、キリトたち人間がAIとどう向き合うかという問いがひとつのテーマとして浮かび上がってくる。『SAO』ではこれまで人間とAIの関係はどう描かれ、どう変化していったのだろうか。
まずはシリーズを通して、これまでAIがどう描かれたのかということを振り返ってみたい。『SAO』第1期のアインクラッド編では、ユイが人工知能を有した存在としてキリトたちの前に現れる。ユイはSAOサーバーのメインシステムである「カーディナル」のメンタルヘルスカウンセリングプログラムとして設計されたというものだった。
劇場版『オーディナル・スケール』では黒ユナ、白ユナと呼ばれる2種類のユナがAIとして登場。劇中でARアイドルとして登場する黒ユナはSAO生還者が持つ重村悠那の記憶を収集するために作られたデータ収集用AIとして、白ユナはSAO生還者の記憶から生成された「デジタルゴースト」として高度な言語化モジュールが用いられ、ユイ同様高度な人工知能として描かれていた。
アリシゼーション編以前の人工知能の特徴としてトップダウン型AIと呼ばれる、いわゆる一般的に認知されているAIのアプローチの型として描かれていた。つまりはプログラムに人間の知識を学習させて、高度な知能を身につけさせるという方法だ。劇中でもキリトたちと行動をともにしたユイが、日に日に知能を蓄積していき人間と遜色ないほどの知能を有するまでになったのもそのためだ。
本編をざっとおさらいしておくと、通信ネットワーク内仮想空間管理課の職員としてキリトに便宜を図っていた菊岡誠二郎の本当の正体が、AIを無人兵器に軍事転用するための極秘計画プロジェクト・アリシゼーションを遂行する「ラース」の最高責任者であることが明らかになる。キリトが送り込まれた仮想空間「アンダーワールド」は、新生児の魂を用いていちから育て上げ、高度な人工知能を持ったアリスと呼ばれる極めて高度なAIを生み出す、いわば文明シミュレーションのための仮想世界であった。
ここではボトムアップ型AIが人間の脳の構造そのものを人工的に再現することで、知性を発生させるという、簡単にいってしまえばトップダウン型とは真逆のアプローチ方法がとられた人工知能として描かれている。キリトが「アンダーワールド」に送り込まれると、現実と虚構との区別が曖昧になるほどその差異は認識することができなかったという状況からも人間に近しい高度な人工知能が生まれつつあることを示している。それはつまり、現実世界と同様の文明が仮想空間内で築かれている、ということを意味していた。