星野源は“代弁者”として周囲に寄り添う 『MIU404』志摩一未として自らを罰し続ける姿

星野源、『MIU404』で“代弁者”に

 俳優、音楽家(歌手だけでなく作詞作曲まで)、文筆家……ありとあらゆる「表現」の手段を持ち、色んな顔を見せ続けてくれる我らがポップスター・星野源。

 俳優としての顔はクールでひょうひょうとしており、素っ気ないながらも実は優しく仕事熱心というような役どころが多い。『コウノドリ』(TBS系)の産婦人科医・四宮も、淡々としていながら実は誰よりも妊婦と赤ちゃんのことを考えていた。また、彼が俳優として、ミュージシャンとして大きくブレイクするきっかけになった『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)でも、感情表現が乏しく一見ロボットかのような津崎平匡を演じ、契約結婚を通してどんどん凝り固まっていたものが解きほぐれていくような、人間味を取り戻していく過程を見せてくれていた。

 また、「恋ダンス」という社会現象まで巻き起こした本作の主題歌「恋」を手掛けたのも星野本人。ここで見せるアーティスト、歌手としての顔は役どころの対極にある。終始ハッピーな気持ちにしてくれるポップで親しみやすさ満載のメロディーライン。それでいて洗練されていることを忘れず、「洗練されたもの」と「心地よさ」というなかなか共存が難しいものを同時に提供してくれ、それを「万人受け」にまで昇華させるという離れ業をやってのける。歌詞もライトに見せかけてよくよく読んでみると奥深いのもまた彼らしい。

 そんな星野が、今期ドラマで綾野剛と共にW主演を務めるのが『MIU404』(TBS系)での志摩一未(星野源)。銃口を突きつけられても一切怯むことなく“死”を恐れない様子に、過去に何があったのかと様々な憶測を呼んだ第4話を経て、その過去と苦悩が明かされた第6話。かつての相棒の原因不明の死。彼のSOSを見て見ぬフリをし、死ぬ前に自分に寄せた連絡にも応えようとしなかった過去の自分を悔やみ続ける。犯人にかける言葉も内心では「お前が言うな」のブーメランとして自分に何度も返ってきて、自身の心にどんどんどんどんボディーブローのように痛みが染み渡っていくのを耐えてきたのだ。

 自分のことは諦めながらも、他人の罪に対峙し続けその更生を願うという日々。罰する側にいながら、誰にも救いを求めず罰されるべき自分を抱え続けていた。その矛盾の中で引き裂かれそうになりながらも、自身への拭いきれない軽蔑をずっと胸に秘めたまま、自分の中にある「正しさ」を信じなければならない。そんな難しい役どころを、あの言葉数少なで表情のバリエーションも多くはない志摩に見事投影させている。また、綾野剛演じる伊吹藍に対する志摩の眼差し方に、志摩の心情の変化が読み取れるのが面白い。2人の距離感がどんどん近づいていることも互いのアイコンタクトから伝わってくるのだ。

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