森山直太朗、『エール』序盤を牽引する重要な役割に 朝ドラとミュージシャンに親和性?

森山直太朗、役者としての魅力

 紀元前1億年前からという誰もが予想しなかった時代から始まったNHK連続テレビ小説『エール』。第1週は、朝ドラ恒例とも言える“子役週”であり、主人公・古山裕一(窪田正孝/石田星空)の幼少期が描かれている。

 裕一役の石田星空をはじめ、後に裕一と生涯の友となる村野鉄男役の込江大牙、佐藤久志役の山口太幹ら子役たちの好演が光るなか、“大人”のキャストして存在感を放っているのが、森山直太朗だ。小学校教師・藤堂清晴役として、裕一を音楽の世界に導く重要な役割を担っている。「ミュージシャン・森山直太朗」へのインタビュー経験もあるライターの麦倉正樹氏は、森山の演技の魅力について次のように語る。

「木村拓哉さん主演のドラマ『HERO』のシーズン2(2014年/フジテレビ系)にゲスト出演したことはありましたが、今年の1月から2月にかけてNHKで放送された柄本佑さん主演『心の傷を癒すということ』の安智明役、そして今回の『エール』の藤堂清晴役を見ると、いよいよ本格的に役者にチャレンジしていくのかなという気がしています。朝ドラでは、前作『スカーレット』の草間さん(佐藤隆太)など、主人公の幼少期を導く“師匠”が必ずといってもいいほど登場します。しかも、今回は“音楽”がテーマということもあり、師匠には相応の説得力が必要となりますし、作品の方向性を決める上でも非常に重要な役割と言えます。その点、森山さんは紛れもない音楽のプロであり、見事に説得力を持った演技を披露してくれていると思います。裕一へ投げかけている言葉にも“嘘”がありません。20代の頃、『さくら(独唱)』で鮮烈なデビューを飾ったこともあり、直太朗さんには“青年”のイメージがありましたが、本作を観て、しっかりと貫禄が備わる歳になったんだなと感慨深いものがありました」

 これまで、バラエティ番組などでも巧みなトークスキルを見せてきた森山。麦倉氏は「真面目にふざけることができる人」と評し、役者としても今後重宝されるのではないかと続ける。

「取材の際にも感じたことなのですが、直太朗さんはとにかく『面白くしよう』と考えて、いろんなサービスをしてくれる方なんです。言葉がどのように受け取られるか、読者にどう伝わるかを、しっかりと考えている。『自分のことは自分が一番分からない』という直太朗さんの言葉も印象に残っているのですが、彼は、“俺が俺が”と主張するというよりも、皆が求めるものにしっかりと応えていくタイプなんだと思います。それは、演じるという役者の仕事とも合致するもののような気がしています。『エール』の演技を観て、今後も各所からオファーがあるのではないでしょうか。

 また、直太朗さんはデビュー時から、作詞家の御徒町凧さんとタッグを組んできましたが、昨年公開のドキュメンタリー映画『森山直太朗 人間の森をぬけて』でひとつの区切りをつける過程が描かれていました。それが直接的な理由というわけではないと思いますが、彼の中で新しい挑戦が始まっていることは確かだと思います。昨年もドラマ『同期のサクラ』(日本テレビ系)に、主題歌『さくら』を提供するのみならず、制作側の意向を受けて、その2019年バージョンを新たに録音し直していましたが、この動きも数年前だったら考えられないことだと思います。本作『エール』への出演も含め、これまでにない直太朗さんの活動が今後もあるのではないでしょうか」

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